キャンティ2020が直面する危機
5月3日まで続くロックダウンで影響を受けているのはレストラン業界だけではなく、ワイン業界も深刻なダメージを受けている。一方では自粛によって家庭でのワイン消費が伸びている様だが生産の現場は深刻な資金不足に陥っている。トスカーナを代表する一大生産者組合である「キャンティワイン組合 Consorzio Vino Chianti 」によれば加盟するほとんどの生産者がもはやなすすべもなく、銀行も現段階では全ての融資や支援を拒否して扉を閉ざしてしまう様な状況だ、と語るのは同組合会長ジョヴァンニ・ブージ Giovanni Busi。 「農業は止めることができない。いまも毎日畑ではブドウ畑の管理に精を出してくれる農家がいる。彼らにもワイナリーの従業員にも報酬を支払わないといけないし、彼らを止めてしまうことは畑を放棄することになる。それはワインの死を意味する。各生産者の財政状況を鑑みて、協会は2020年の生産量を20%減らすという難しい決断に至ったが、イタリア政府の農業に対する補償はいまだ不透明。このままではイタリアの農業は崩壊してしまうだろう。」 ブージ会長がいうにはスパーマーケットを中心とした市場ではワインの販売が好調ではあるものの、代金回収が現在できない状況にあるという。それは消費者→スーパーマーケット→ワイン卸商→生産者という資金の流れが滞っていることを意味する。また、スーパーマーケットで売れるのは大規模生産者による大量生産ワインが中心で、中小規模のワイナリーは販売ルートも全て閉鎖状態で八方塞がりの状態にある。このままでは20%減産どころか最悪2020は幻のヴィンテージとなってしまう可能性もあるというが、しかしそれはキャンティだけに限らず、現状ではイタリア全土のワイン生産現場に言えることだ。

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