コロナ後の未来へ3 ダヴィデ・オルダーニの場合

ミラノ郊外コルナレードにあるレストラン「D.O. ディーオー」シェフ、ダヴィデ・オルダーニ Davide Oldaniはマルケージの元で学び、現在はミシュラン1つ星、ガンベロ・ロッソ3本フォークなど数々の受賞歴を持つ、イタリアを代表するシェフの一人だ。元サッカー選手という異色のキャリアもあり、彼が標榜するのはファイン・ダイニングでありながらもゴージャス、グルマン、高級食材といったガストロノミーとは逆方向であり、地元の日常的な食材をローコストでいかに美味しく食べさせるか?という命題「クチーナ・ポップ」を提唱している。オルダーニの思考はまさにいま、コロナ後にイタリアのレストラン界に訪れるであろう大変革への貴重なアドバイスとなっている。Gambero Rossoに掲載されたダヴィデ・オルダーニのインタビューをここに全文掲載する。
Q:今回の事態が始まった時、最初に受けた印象はなんでしたか? A:ひとことでいうなら「狼狽」ですかね。なにをどうしていいのか分かりませんでした。まるで両親がわたしに話してくれた戦時中のことのように思えました。そしてようやく、ああ、起こるべくして起こったんだと思えるようになりました。環境やサステイナビエイティについてとかくここ数年議論されてきましたが現実とは乖離した対策ばかりでした。人間は地球を支配したつもりでいたのでしょうけど、地球はそうではなかった、ということです。 Q:なにかショックを受けた映像などはありますか? A:イタリアの主だった広場が全て無人だったことです。まるで人間は地球からしてみれば敵であるかのように思えました。わたしの町のすぐそばでも何人も死者が出たこともショックでした。
Q:レストラン界は今後どのようにすればいいと思いますか?
A:わたしたちは実態がよく分からないバブルの世界生きていました。昔の人は足元を固めてから次の行動に移せ、と言ってくれましたが、最近はそうではなく「説教はたくさんだ」というような風潮にありました。手元に資金がなかったとしても関係なく、自己の行いを顧みることもなく他人にその債務を押し付けてきました。例えば、大した理由もないのに何ヶ月も支払いそ先延ばしにする、なんてことはその最たる例です。そうしたことももういい加減やめないといけない。
Q:レストラン再開の条件となる衛生基準によっては営業内容も変わることになりますか? A:もちろんです。でもそれがいま必要であるとも思います。テーブルに着く前に手を洗う、適正な人数で食事を楽しむ、テーブルを密にしない、食事を共に過ごし料理を味わうには帰っていいことだと思います。そうしたことでどういったことが必要とされるのか、が分かってくるでしょう。
Q:あなたの著書「クチーナ・ポップ」にはすでに現代の料理と、今後向かうべき料理が対比されています。つまり表層的な料理ではなく、本質的な料理が今後必要になるのでしょうか?
A:わたしが何年も思ってきたこと、それは人間と食をつなぐ倫理的なアプローチです。食べることで食材を無駄にしてはいけない。それは2015年のミラノ万博で世界基準となりました。考える料理、つまり歴史や伝統が込められている料理が今後求められることでしょう。それが理解できないのなら食べるべきではないし、もうそうした料理は必要とされない。未来主義にも通じる考えですが「クチーナ・ポップ」とはいま本当に未来へ向かうべき道筋にある、そう確信しています。 D’O Cornaredo (MI)  loc. San Pietro all’Olmo  p.zza della Chiesa, 14 tel. 02 9362209 www.cucinapop.do  

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