コロナ後の未来へ5 ダ・ヴィットリオの場合
ベルガモの3つ星レストラン「ダ・ヴィットリオ」は今回のコロナ禍の中でも、いち早く都市封鎖ロックダウンが行われたベルガモ郊外ブルサポルトにある。創業1966年、ヴィットリオ・チェレアが築いたレストランはその後キッコことエンリコ、ボボことロベルトら5人の子供達が手伝うようになると大きく発展。2010年以来11年連続でミシュラン3つ星を維持しているイタリアを代表する名店だ。「ダ・ヴィットリオ」が他の3つ星と大きく異なるのはバンケット、ケイタリング、パーティなどの需要も多いため従業員200人を数えてドルチェやペイストリーを中心に食品を販売。本店ブルサポルトの他にもスイスのサンモリッツ店、2019年にOPENした上海店がある。エグゼクティブ・シェフでありチェレア家長男であるキッコ・チェレアはそうした「ダ・ヴィットリオ」ファミリーの要であり精神的支柱である。そのキッコがGambero Rossoに語ったレストランの未来像をここに紹介する。 2020年4月26日の時点でイタリアのロックダウンは第二段階「ファーゼ・ドゥエ」へと緩やかに移行し、レストランは大幅な規制や制限とともに6月1日から営業再開が許可される予定だ。イタリアのトップシェフでは、例えばしばらく料理をすることも手につかなったニコ・ロミートや、自宅での料理風景をSNSで発信し続けるマッシモ・ボットゥーラのような例があるが、一方のキッコ率いる「ダ・ヴィットリオ」は、ロックダウン直後から無償でボランティア活動を続けている。3月18日、キッコはベルガモの見本市会場に特設された野戦病院に食料を無償で届けることをいちはやく表明。その活動は現在ももちろん継続中で、イタリアで最も過酷なコロナ最前線である地元ベルガモの医療従事者たちに力を送り続けている。また、同病院からの感染者も増えた4月8日以降は病院だけでなく、感染者が出た一般の家庭にも食料を届けはじめた。 Q:野戦病院に食料を届ける活動はどのように進められていますか? わたしたちはフルタイムで取り組んでいます。毎日の昼食、夕食それぞれ200から250食、これは7月まで続けるつもりです。 Q:何人の従業員がこの活動に関わっていますか? 全部で200人の従業員がいますが、そのうち料理人、運営、配達など合計15人ぐらいです。その他にデリバリー営業に10人、他のスタッフは9週間の休業補償期間で自宅待機中です。従業員の中には30年以上働いているものもいますし、レストランは50年を迎えることもできました。過去の歴史の中で従業員への給料遅延は一度もありません。そしてこれからももちろん、スタッフ、生産者、業者、全て関係者とより強く連携していくつもりです。国や自治体からの補助や保証については、残念ながら未だまだ実現していません。
Q:いま「ダ・ヴィットリオ」に必要なものは? A:お金です Q:6月1日からの営業再開に向けての準備は? A:日々着実に続けています。しかし具体的な政府の方策が提示されるまでは確かなことはなにもできませんし、今は動かないつもりです。日々状況は変化しますし、それはもう1ケ月以上続いています。もちろんイタリア政府も非常に困難な常にあることはよく理解しています。とはいえ新しいアイディアはすでにいくつもあります。「ファーゼ・ドゥエ」でのレストラン再開は州ごとに異なります。感染者がゼロに近い州では厳格な規制はあまり意味がないことでしょうし、田舎のレストランで広大に敷地があり、屋外のテラスや庭でテーブル同士がたっぷりと距離をとれる、そうしたレストランならばすぐにでも営業を再開しても問題ないと思っています。
Q:再開に向けた具体的な衛生対策は?例えばプレキシガラスでテーブルを覆うこともありえますか? A:テーブル間のソーシャルディスタンスに関してはもちろん、メニューも使い捨てにします。トイレも使用するたびに消毒するようします。そうした衛生対策に対してはもっと専門家からのアドバイスが欲しい。わたしの友人はレストラン用のプレキシグラス企業に大金を投資しました、というのも今後売り切れも予想されますからね。ただ現状では「ダ・ヴィットリオ」では使用しないと思います。サンモリッツはまだ休業中ですが上海店は再開できたので、いい兆候だと思います。もちろん売り上げはコロナ前に比べると50%減ですが、それでも現状では悪くはないと思います。 Q:おそらくしばらくは外国人客はこれないと思いますが、その問題については? A:「ダ・ヴィットリオ」では50〜60%が外国人客でした。これからしばらくは100%イタリア人となることが予想されます。それ自体はとても刺激的なことなのですが、購買力は外国人客に比べると低いという現実を直視しないといけません。 Q:いま現在行なっているケータリングについてはどんな状況ですか? ケータリングには25人が従事していましたが、いまは全てキャンセルで、少なくとも10月までは無理でしょう。ウエディングやブックフェア、サローネ・ディ・モービリ、ヴィニタリー、全てキャンセルになりました。延期になったものも一部ありますが、それもどうなるかはわかりません。多くの人が集まるイベントは事実上今は不可能ですから。その代わり「ダ・ヴィットリオ・アット・ホーム」という個人向けケータリングでは肉、魚、野菜という週替わりのメニューが3種類。「オレッキア・デレファンテ=像の耳(コトレッタ)」レストランのシグネチャーディッシュもいくつかオンメニューしています。デリバリーで重要なのは、売り上げももちろんですがそれより「ダ・ヴィットリオは生きている」ということを世間に知っていてもらいたいのです。 6月1日のレストラン再開後はおそらくメニューももっと絞ったものになるでしょうけれど、料理に関しては以前と違うことをするつもりはありません。むしろその逆で、以前と同じ様に帰って来たゲストをお帰りなさい、と迎えたい。みんなレストランで食事することを待ち望んでいたのですから。それと本来のスタイルではありませんが2回転制にすることも考えています。というのもテーブルとテーブルの距離を話さないといけませんから。でもそれもいまはまだアイディア段階で具体的なことはまだなにもいえません。とにかくいまは状況をみましょう。わたしも疲れているのは事実ですけれど。

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