コロナ後の未来へ7 カルロ・クラッコの場合
ミラノを代表するシェフ、カルロ・クラッコもミラノ含むロンバルディア州がロックダウンに突入したのちにいち早く行動を起こした1人だ。レストラン連合を代表する1人として州知事に嘆願書を提出したり、病院で医療従事者へ食事の提供を始めたのもクラッコが最初だった。ミラノを代表する建造物であるガッレリア内にある「クラッコ」はカフェ、レストラン、パーティスペースからなる複合施設だがデリバリーも早々に取り入れ、120人いるスタッフのうち15人が従事している。Gambero Rossoのインタビューから6月1日再開に向けたカルロ・クラッコの現在地を読み解く。 Q まずはロックダウン開始直後の状況から教えていただけますか? オーブンの火を落としてレストランを閉めたのは3月13日、最後の最後までなんとかしようと試みたんですけどね。ランチ営業だけにしたけれどお客さんも少なく、こんなひどい状態はそう長くは続かないだろう、そう思っていました。チームをまとめてやる気を維持するためにもなんとか灯りをともそうとしたんですけどね。でもロックダウンが始まり、暗闇の時代が始まったわけです。現在休業しているのはガッレリア内の「クラッコ」の他2件の「カルロ・エ・カミッラ」「カフェ」そして全てのイベントも中止になりました。外国の仕事としてはシンガポールエアラインの機内食、これは非常に好調だったのですが現在運休中です。モスクワ店もその後、休業になりました。いまはこれからどうすれば続けていけるのか?その方法を模索中ですが、おそらくそれは長く辛い旅となるでしょう。わたしのレストランが入っているホテルでは200室あり朝食も提供していました。それもまたゼロから始めないといけません。以前のような明るい未来にはなりえない、それだけは誰もが理解しています。 Q いま現在の活動について教えて下さい 今は毎日見本市会場フィエラで医療従事者用の食事を作っていますが、医療最前線がどのような状況なのかはわたしには分かりません。病院から聞かれたのは医療従事者のために食事を作ってくれないか?ということでした。毎食50食作ることから始め、今は400食まで増えました。でもそれはとても素晴らしい活動だと思っています。うちのチームにとってもメンタル的にリスタートすることはなによりも重要でしたから。そうしているとオンラインでの注文や問い合わせが急に増えだしたんです。もちろんできることも、できないこともありましたが。ならば、いまは復活祭=パスクアに向けてコロンバはじめさまざまなドルチェ、パスクワ用料理などオンライン商品を充実させようと前向きになりましたね。正直こういった季節もののプロモーションはやったことなかったのですが、新しい挑戦になりました。ミラノの各家庭では親戚に会うのもままならなかったので、せめて自宅で復活祭を祝いたい、という気持ちがオンラインでの消費につながったのだと思います。デリバリーも含め、オンライン商品開発はこれからも続けていくつもりです。 Q レストランの未来をどう考えていますか? レストランという存在は、なにものにも代え難い。今後は以前よりもっとお客様優先になり、近づき、信頼し合える存在となるでしょう。今回の災害は以前よりももっと真剣に仕事に打ち込めるチャンスだ、そうとらえていますけれど、今は本当にひどい状況です。何千人も死者が出ていますし、多くの人が仕事や希望、思いやりを失っています。これは例えコロナが収束したとしてもそう簡単に忘れられることではありません。わたしたち自身も一層健康や衛生には注意を払わないといけません。考え方も改めないといけないと思います。とはいえ、我々料理人はマスクをして手袋をしてコックコートを着て衛生に注意しながら料理するだけです。完全防護の手術着を着るわけにはいかないし、もちろんメニューに関しても以前のような手渡しはやめてタブレットにするという方法もあります。テーブルの距離を離して時間制限をつけ、2回転にするのもひとつの案です。それもお客さんが来てくれれば、というのが大前提になりますが。 「クラッコ」では外国人、イタリア人の比率は半々でした。いま外国人がイタリアに来ることはできませんから、その半分のイタリア人ゲストが戻ってきて来ることを願っています。これが90%外国人客だったり、イベント中心だったレストランは相当厳しいと思います。それが戻って来るのは相当時間がかかりますからね。おそらく1年はかかるでしょう。すべてが元どおりになるのは感染という不安が無くなり、人に近づいたり触れ合ったりできるようになる、それからです。恐らくは氷の1年となるでしょう。 Cracco – Milano Galleria Vittorio Emanuele II Tel+39-02 876774 www.ristorantecracco.it  

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