イタリアワイン予報2020 その1 Veneto
2020年8月現在、イタリアにおけるレストラン業界は未だ一進一退を繰り返しながらの斥候状態とはいえ、人間の思惑とは関係なくブドウは成長し続ける。マンパワーおよび経済的理由からあえて2020年の収穫量を抑える方針を示した地区もある中、先日MIPAAF(Minisetero dello Politiche Agricole Alimentari e Forestali =イタリア農林食料政省)によって今年の各地区の収穫予報が発表された。ここでは各地方のぶどうの収穫と2020年ヴィンテージ予想をしてみたい。まず第一回目はイタリア一のワイン生産量を誇る北イタリアの雄ヴェネト Venetoだ。
MIPAAPによると今年の各州および地域の収穫予報は以下の通り。上位10州・地域のうち生産量一位のヴェネトはじめ北イタリアが6州・地域を占めており、北イタリアのワイン生産はイタリアのワイン生産の中では非常に重要な地位を占めている。2020年の予想でもイタリア全体のワイン総生産4750万ヘクトリットル(47億5000万リットル)に対して主要北部6州・地域の合計は約2500万ヘクトリットル(約25億リットル)と過半数の53%を占めているほどだ。新型コロナウイルスの影響により、2020年度のワイン市場は当然停滞の様相を見せているのだが、Cantina Italia(ICQRF)のデータによれば、ことイタリアワインに関していうならば、例年並みの売り上げに戻した2019年以降さほど深刻な下降状態にあるわけではない、ということだ。
PRODUZIONE VINO ITALIANO 2020 (MIPAAF)
州名 | 収穫量(単位ヘクトリットル=100L) | 順位 |
Valle d’Aosta | 16,816 | 21位 |
Piemonte | 2,603,187 | 7位 |
Lombardia | 1,301,272 | 9位 |
Trentino | 1,001,884 | 10位 |
Bolzano | 310,402 | 16位 |
Friuli | 1,784,896 | 8位 |
Veneto | 10,949,837 | 1位 |
Liguria | 39,743 | 20位 |
Emilia Romagna | 7,250,170 | 3位 |
Toscana | 2,625,409 | 6位 |
Umbria | 425,942 | 14位 |
Marche | 815,924 | 11位 |
Lazio | 799,817 | 12位 |
Abruzzo | 3,183,594 | 5位 |
Molise | 227,036 | 17位 |
Campania | 778,468 | 13位 |
Puglia | 8,946,736 | 2位 |
Calabria | 109,688 | 18位 |
Basilicata | 87,352 | 19位 |
Sicilia | 3,911,191 | 4位 |
Sardegna | 363,412 | 15位 |
Veneto
南イタリアにおけるプーリア同様、イタリア最大のワイン生産量を誇るヴェネトは2019年には1100万ヘクトリットル(11億リットル)に到達。内訳はDOP 780万ヘクトリットル(7億8000万リットル)、IGP 240万ヘクトリットル(2億4000万リットル)だった。2020年の収穫量はやや減少し、生産者組合(Prosecco DOCのように)はおそらくストックあるいはリザーブ用に回すことになるだろう。スーパーDOCとも呼ばれるProsecco DOC、Pinot Grigio, Valpolicella、Soaveはかなりの高品質が期待できる、とヴェネト州はすでに公式発表している。 広大な生産地を持つSoaveの予想生産量は45万ヘクトリットル(4500万リットル)。2019年の50万4000(504万リットル)ヘクトリットルに比べると減少したが、2018年の41万8000ヘクトリットル(418万リットル)よりは多い。 「おそらくマーケットが求める生産量に達するだろう」と語るのはソアヴェ生産者組合会長のAldo Lorenzoni アルド・ロレンツォーニ。総面積6300ha、総生産量4700万本、2870件のブドウ栽培農家 Viticoltoriが参加する生産者組合だ。「2020年はさほど大きな問題もなく進んでいる。ブドウの生育状態は健康かつ最高なので、おそらくはポジティヴなヴィンテージとなるはず。ガルガネガの生育もいい。生産量は多少減少しそうなので、マーケットが求めるソアヴェのクオリティに達するよう、優良畑をセレクトする方針が、すでに組合の会合で決定された。」とのことだ。 Conegliano Valdobbiadene Prosecco Superioreでは、ユネスコ世界遺産認定以来二度目の収穫となるが、減速傾向にある。同組合は総面積7500ha、Case Spumantistiche カーゼ・スプマンティスティケ=発泡性ワイン生産者180社以上、3300件のブドウ栽培農家 Viticoltoriが加盟している。Innocente Nardi インオチェンティ・ナルディ会長は「今年のように特殊な状況では生産者に対する保護が必要です。マーケットも経済危機によって活発ではないので、1haあたりの収量を13.5トンから12トンに減らし、生産量を減らします。おそらく売り上げは2019年に比べ10%〜20%減少すると思いますが、2010年はその代わり減少率は5%以内だとシミュレーションしています。もちろんプロセッコ用にワインの一部は翌年以降のためにストックに回されます。ベース用は1haあたり2トン、Le Rive、Bioでは1haあたり10トンの生産量となり、トータルで1500万本生産予定です。収穫は2019年に比べると8〜10日早くなるはずで、ブドウにも大きな問題はない。2019年同様、素晴らしいクオリティが期待できますが、今年は収穫期に外国人の労働力が足りない。東欧圏の労働者はコロナの影響で入国できないのです。機械化できない畑では毎年1万3000〜1万5000人の労働力が必要なのです。 一方Prosecco DOCは2020年には400万ヘクトリットル(4億リットル)の生産が予想されており、昨年の390万ヘクトリットルを若干上回る見込み。生産者たちは収量を落としたり、生産量も減らす意図はないようだ。協会のStefano ZanetteによればDOC(約100万ヘクトリットル=約1億リットル)の生産量を減らすことでクオリティを高め、2021年1月1日より2020ヴィンテージを販売開始する予定。組合規定による最大収量1haあたり18トンのうち、20%をストックにまわし7月以降に瓶詰めする予定。生産量は過去最高新記録となった2019年の370ヘクトリットル(3億7000万リットル)と比べてもさほど変わらないはずだ。総売上は第一四半期でマイナス4%を記録したが、いまやスパークリングワインは世界的な流行にある。ゆえにアメリカやイギリスの停滞が数字に表れている。7月1日現在のブドウによる生産量予測は148万ヘクトリットル(1億4800万リットル)。ブドウは健康で大きく、開花時期からすでに良い収穫となるであろうことは予測されていました。あとはよい収穫を迎えるだけです。 Valpolicella ヴァルポリチェッラは保護協会によればヴェネト州の大部分のぶどう畑とは対照的に例年より多い収穫量が予想されている。生育状態はよく、完熟期には糖度、ポリフェノール、アントシアニン、全て最高の状態になるとのこと。平年よりも約2週間早い生育状態で健康状態にも問題はない。ただ6月上旬にValpolicella Classica地区には激しい雹が降ったので、その分は多少マイナスとなることも考慮しないといけない。 DOC delle VeneziaはDOC Pinot Grigioを保護監督しているが、例年よりも少ない収穫量を予測している。協会会長Albino Armani アルビーノ・アルマーニによれば、2018年、2019年はそれぞれ1haあたり140万ヘクトリットル(1億4000万リットル)、124万ヘクトリットル(1億2400万リットル)だったが2020年はストックを含め130万ヘクトリットル(1億3000万リットル)となるはずで、2019年に比べると減少。地域的にはヴェネトとフリウリは10〜15%収穫量が減少。ブドウの状態はよい。ピノ・グリージョは収穫直前15日が重要だ。当初は収穫も早まるかと思われたが、いま生育はややスローになっている。早い畑では8月17日か18日以降に収穫は始まるだろう。SAPORITAをもっと見る
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