さっくり、エアリー。ピッツァでもピンサでもないClandestino 41のPi**a
中目黒なのにここはイタリアよりイタリアかもしれないと思わせる「クランデスティーノ41」。ワインとカクテル、ハム・サラミ・チーズからパスタ、肉料理まで全てが手軽に楽しめる、これぞオステリア(居酒屋)の見本である。店を切り盛りするのはDani GrecoとGraziano De Angelis、通称ダニとグラ、二人のトスカーナ人。そこに時折り、助っ人が入る。訪れたその日は、ヴェネト人の料理研究家Alessandro Coviello、通称アレがヴェネツィア的にチッケッティ・ミスティや自家製ラザニア、かぼちゃとポルチーニのカサレッチェ、アペロール・スプリッツのチーズケーキといったスペシャルメニューを提供していた。 しかし、この店で必ず食べたくなるのが、Pi**aだ。発音は「ピ..サ」くらいだろうか。ともかく、ナポリ風のピッツァでも、ローマ風のピンサでもなく、表面はサクッと仕上がり、中はふんわり空気をたっぷり含んで、香ばしい香りが立ち上る、独特の食感の生地の“ピッツァ”である。材料はピッツァ専用粉、米粉、イタリア産ビールの搾りかすの粉、ビール酵母、塩、水。生地作りはダニの担当だ。作り方は独学で習得。リエヴィト・マードレ(自家培養発酵種)を使ってパンやピッツァを作る料理研究家の従姉妹にも色々と教えてもらいつつ、試作を繰り返してたどり着いたレシピだという。発酵には48時間以上かけ、加水率は80〜85%、フォカッチャも作っているが、そちらは90%とさらに高い。「ゆっくり時間をかけて発酵させると消化のいい生地になる。それに、水が多ければ、粉が少なくなる。つまり粉を食べる量が少ないからさらに消化が良くなるよね」とダニ。フォカッチャに使う粉は、普通の小麦粉とこれにも米粉を使う。米粉は吸水率が高く、焼いた後に冷凍してもカリカリ度が失われないからだ。 発酵した生地は、セモリナ粉の山の上に生地をおき、指で押して広げる。セモリナ粉の山が、指の圧力を吸収し、生地に穴が開かずにふんわりと広がるのだという。楕円形に伸ばした生地を天板にのせ、オリーブオイルをかけて、330度のオーブンで3分焼く。これはプレコットゥーラ(前焼成)で、焼きあがったら網にのせて蒸気を吐き出させる。注文が入ったら具材を乗せてさらに仕上げ焼きをするのだ。具材をのせて焼くのは、グラの仕事。その間、ダニは主にドリンクの提供に回る。
このPi**aにはワインはもちろん、ビールもイタリアのウイスキーも合うが、ここでの人気はカクテル。特にスプリッツは女性人気が高い。一般的なアペロールあるいはカンパリで作るスプリッツのほか、オリジナルのランブルスコ&アペロール「スプリッツ・ロッソ」、アマーロ&プロセッコ「アマリッツ」、アペロールとペローニ(ビール)「ペロ・ペローニ」と、どれもイタリアらしさに溢れている。スプリッツとフォカッチャ、あるいはPi**aの組み合わせは無敵で無限。つい食べ過ぎてしまっても「粉が少ないから大丈夫」である。
SAPORITAをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。