現存する最古の歴史を誇るチーズ、DOPペコリーノ・ロマーノを味わう
ローマ料理に欠かせないチーズ、ペコリーノ・ロマーノ。アマトリチャーナはもちろん、アマトリチャーナの原型であるアッラ・グリーチャも、カチョ・エ・ペペも、ペコリーノ・ロマーノがなければ作るのは諦めた方が良い。カルボナーラだって、ローマ式を目指すならペコリーノ・ロマーノ一択である。ところが、ペコリーノ・ロマーノの認知度は、パルミジャーノ・レッジャーノに比べてまだまだ低い。牛乳製のパルミジャーノ・レッジャーノがチーズの王様ならば、羊乳製のペコリーノ・ロマーノはローマ帝国皇帝に匹敵すると言ってもいいほどなのに、である。 ペコリーノ・ロマーノは、数多あるチーズの中でも最古の一つで、その歴史は2000年以上昔に遡る。現在のラツィオ州、そしてサルデーニャ州で放牧されていた羊の乳を利用したのが始まりと言われている。古代ローマ人はそのチーズを珍重し、皇帝の宮殿で開かれる宴では調味料として欠かせず、また、戦いではローマ軍の重要な糧食として、パンと麦のスープとともに支給された。兵たちの疲労回復に最適な食料だと考えられていたからだ。
ペコリーノ・ロマーノと枝豆のブルスケッタ(調理「メログラーノ」)
DOP(保護原産地呼称)として、生産地と製造方法が厳密に規定されているペコリーノ・ロマーノは、サルデーニャとラツィオ、トスカーナの一部(グロッセート県)でのみ製造されるハードタイプのチーズで、直径25〜35cm、高さ25〜40cmの円筒形。側面に特徴的な羊の頭部を描いたひし形の刻印とPecorino Romanoの文字が施されている。そのまま食べるなら5ヶ月熟成、すりおろすなら8ヶ月熟成のものが良いとされている。味わいは微かにピリッとした辛味と明快な塩味で、熟成が進むと辛味はさらに増す。個性的なその風味は、パンやパスタとの相性がことのほか良く、また、薄く削ってサラダに加えると味わいが増すだけでなく、全粒粉のパンとともに食べれば栄養バランス的にも優れた食事になるという。
ペコリーノ・ロマーノとカリフラワー、グレープフルーツのサラダ(調理「メログラーノ」)
今年2月より2023年1月まで展開されるヨーロッパの農産物をPRする「ENJOY the taste of life」の一つとして、DOPペコリーノ・ロマーノのプロモーションが始まっている。この秋は、東京都内を中心にイタリア料理店30店舗でペコリーノ・ロマーノを使ったメニューが味わえるキャンペーンが12月6日まで開催中だ。秋が深まるごとに、チーズが恋しくなるこの時期、いつもとは違うチーズを試してみるのもいいだろう。    

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