近藤&永島 年末3日限りのスペシャル・ディナー SALONE TOKYO
2020年12月28日〜30日の3日間限定、1年を締めくくる注目のスペシャル・ディナーが「サローネ トウキョウ」で行われる。これは「サローネ トウキョウ」の永島義国シェフと特別ゲスト近藤正之シェフによるコラボ・ディナーで、イタリア風にいうならクアットロ・マーニ(4本の手=2人のコラボの意味)だ。二人の出会いは、永島さんがヴェネト州アルパーゴのレストラン「ロカンダ・サン・ロレンツォ」で働いていた2007年のこと。「おいヨシ、ミシュランの星付きレストランを渡り歩いてるすごい日本人が来たぞ」とスタッフに言われ、食事に来ていた近藤さんと初めて出会う。近藤さんは当時ドロミティ「サント・ウベルトゥス」(現在3つ星)で働いており、休暇を利用して食べ歩きをしている最中。以来時は流れて二人とも日本に帰国、お互い一緒に働く機会はなかったものの今回初めて2人のコラボが実現したのだ。 白金「センソ」シェフとして活躍した近藤正之さんは現在はフリー。「ビスボッチャ」勤務時に1年のイタリア修行を経て帰国。その後来日していたピエモンテ「リストランテ・グイド」のグイド・アルチャーティに「あなたの店で働きたい」と話したところ、しばらくしてイタリアから電話がかかってきたという。イタリアに渡ったのは半年後の2004年1月。「リストランテ・グイド」で3年、ドロミティ「サント・ウベルトゥス」で冬、夏、冬と3シーズン過ごし、さらに「エノテカ」「ヴィッラ・クレスピ」「ズル・ローズ」とまさに北イタリアを代表する錚々たるトップ・レストランを渡り歩いた。2010年にはアルバ郊外にある「ロカンダ・デル・ピローネ」のシェフに就任。それも「ヴィッラ・クレスピ」時代のシェフであり、同店のコンサルティングをしていたアントニオ・カンナヴァッチュオロ Antonio Cannavacciuoloから直々に来た話だという。いかに近藤さんがカンナヴァッチュオロから信頼されていたか、がわかるエピソードだ。「ロカンダ・デル・ピローネ」はシェフ交代で一度星を失ったあと、近藤さんが就任1年目で再度1つ星に輝く。2015年10月に1つ星を維持したまま日本に帰国するのだが、当時イタリアでミシュランの星を維持していた日本人料理人は近藤正之さん、ヴィテルボ「ラ・トッレ La Torre」時代の能田耕太郎さん(のちに「ビストロ64」で1つ星)、「TOKUYOSHI」の徳吉洋二さん、そして和食「IYO」の市川晴夫さんの4人だ。 一方永島義国さんは「キャンティ」飯倉本店でイタリア料理人としてのキャリアをスタート。「イタリア人と仕事がしたくて」とその後「カルミネ」に移るのだが、提案したメニューがことごとくカルミネ・コッツォリーノから「これはイタリア料理じゃない」とNGを出されたという。これはイタリアに渡るしかない、と一念発起。イタリア人の同僚に頼んでイタリアのレストラン20件に手紙を出したところ、返事が帰って来たヴェンティミリアの「バルツィ・ロッシ Balzi Rossi」で働き始め、以降僻地、辺境のレストラン巡りが始まる。サン・ダニエレ近郊のフリウリ料理店「アンティカ・ベットラ・ダ・マリーザ Antica Bettola da Marisa」、フェッラーラ近郊コディゴーロの魚介料理店「ラ・カパンナ La Capanna」ではおばあちゃん(永島さん談)たちと一緒にテーブルについてスキエやグランセオラの殻を剥き、ウナギを焼く仕事を経験したという。さらに辺境への旅は続きオーストリア国境に近いタルヴィジアーノ、トレヴィーゾ近郊「ダル・ヴェーロ Dal Vero」などを経てシチリアに渡り、2つ星シェフ、ピノ・クッタイア Pino Cucctaiaの「ラ・マディア La Madia」で10ケ月過ごすという濃密な5年間を経て帰国。現在は「サローネトウキョウ」のシェフとして活躍しているのは周知の通りだ。 さて、今回のコラボ・ディナーのメニューからいくつか紹介したい。今回は前菜2、プリモ2、セコンド1、ドルチェ2、さらにアミューズ、茶菓子といったコース仕立てだが「焼きたてとか、茹でたて、そういう料理をご提供したい」と近藤さんがいうように、牛タンをイチジクの葉で巻き、塩釜仕立てにした温前菜が登場予定。パスタは2種類でタヤリンとトルテッリーニ。タヤリンはピエモンテらしくトリュフとバターで。一方トルテッリーニはイン・ブロードになる予定だが、本当は沖縄産孔雀でブロードを作りたかったという。しかし禁猟期のため孔雀が手に入らず、当日は雉などで代用する予定。近藤さんはコラボディナー直前の12月にはブロード作りのために、神奈川県の某有名ラーメン店でスープ修行に挑むという念の入れようだ。 そしてセコンドは「ロカンダ・サン・ロレンツォ」のスペシャリティである「羊のデグスタツィオーネ」近藤&永島コラボ・バージョン。右奥から時計回りに羊のサルシッチャにほうれん草を混ぜたピエモンテのカプネット、羊のタンとプンタレッラ、ラディッキオ・タルディーヴォのバルサミコソテー、アルパーゴ風羊のストゥファートとポレンタ、バラ肉のアッロースト、羊のアッローストとラルドのペースト、羊のしゃぶしゃぶバーニャカウダ・ソース、羊のスネ肉と赤ピーマンの春巻き包み。「ロカンダ・サン・ロレンツォ」の「羊のデグスタツィオーネ」は希少品種であるアルパーゴの羊を食べ尽くす、それはそれは迫力満点で素晴らしいものだったが今回はフランス産の子羊を使用し、ピエモンテとヴェネトのエッセンスを加えたオリジナリティあふれる料理となるはずだ。 そしてデザートは「サローネトウキョウ」でおなじみ、永島さんのシグネチャーディシュである「白いティラミス」。これは永島さんが出身地新潟の雪景色をイメーして作ったものだが、今回はスペシャル・コラボ・バージョン。「ロカンダ・サン・ロレンツォ」時代からのマスカルポーネ、卵黄、生クリームのティラミスクリームの下には近藤さんによるトリュフのバニラアイスクリームとトリュフのクランブルが隠れており、雪の下では大地が息を潜めているイメージか。トッピングには、このデザートを他のティラミスとは一線を画すものとしているコーヒーオイル・パウダー。白い雪のようだが確かにコーヒーの香り。「サローネトウキョウ」OPENにあたり、ティラミスを出すことは決めていたのだがどういうアプローチにするか、3ケ月考えたという永島さんの答えがこのコーヒーオイル・パウダーだ。それは口に含めばはかない雪のように溶け、冷たいティラミス・クリーム、クリスピーなクランブル、そして黒トリュフの香りと渾然一体となり、素晴らしい一夜を締めくくるハイライトとなるはずだ。
サローネ トウキョウ SALONE TOKYO
東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 3F
Tel03-6257-3017
限定ディナー料金20000円(税サ別)
 2020年12月28日、29日、30日 18時または19時から
予約は電話またはWEBにて
http://salone.tokyo/
 

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