バリラが100%イタリア産小麦に仕様変更
久しぶりにイタリアの食料品店をのぞいてみたところ、バリラのパッケージが変わっていたのに気が付いた。普段バリラを使用している人ならばすぐにわかると思うが今まではネイビーブルーだったイメージカラーがスカイブルーに変更されていたのだ。それはあたかもFacebookのイメージカラー変更に歩みをあわせたかのよう。しかも一番重要な変化はパッケージに大きく「100% Grano Italiano=100%イタリア産小麦」と書かれていたことだ。もし手元にバリラのパスタがあれば見て欲しいのだがそれまで原材料には「デュラム小麦のセモリナ」としか書かれておらず原産国は特定されていなかったのだ。バリラは公式見解として小麦の安定供給を得るためにイタリア産にこだわらず、主に北米産など世界中の小麦を使用していることは認めているが、一部のイタリア人の間では「なぜイタリア人なのに外国産の小麦を食べなければいけないのだ?」という反発の声が上がっていたことも事実だ。 Cucinageek.itが昨年6月に公開した記事では、イタリアで市販されているパスタの品質ランキングが発表されているがその定義は以下の通り。まず原材料である硬質小麦が外国産ではないこと。それは多少値段が高くなったとしても100% Made in Italyのパスタを買ってイタリアを支えようという強い意志から来ている。それはちょうどこの時期イタリアも最初のロックダウンが開けて経済活動がようやく再開されたのでイタリアの産業を支えたい、という社会背景も影響しているのかもしれない。製造法に関しては低温長時間乾燥、そして見た目も食欲をそそる、というのが判断基準だ。スーパーマーケット部門(大量生産)でのパスタ・ランキングは以下の通り。 1位 De Cecco デチェコ アブルッツオ・キエーティに1886年に設立。スーパーマーケット部門では最高品質のパスタ。 2位 La Molisana ラ・モリザーナ モリーゼ州カンポバッソに1910年に設立。2011年に買収され新ブランドして再出発。 3位 Voiello ヴォイエッロ カンパーニア州カゼルタに1879年に設立。1973年からバリラ・グループに。Grano Aureoシリーズは100&イタリア産小麦を使用。 4位 Rummo ルンモ カンパーニア州ベネヴェントに1846年設立。パッケリ、トリポリーネは特に人気が高い。 5位 Granoro グラノーロ プーリア州コラート生まれ。Granoroシリーズは100%プーリア産小麦を使用し、タンパク質含有量13%と高タンパク。全粒粉部門でも評価が高い。 6位 Divella ディヴェッラ プーリア州バーリにあるルティリアーノに1890年設立。 7位 Garofalo ガローファロ カンパーニア州グラニャーノに1920年設立。ヴェルミチェッリ、メッツェ・ペンネが人気。 一方参考までにEatalyで販売されているPasta Artigianale、このイタリア語を翻訳するのは難しいのだがいうならば職人気質を残した大量生産ではない家内制手工業パスタ、だろうか。そのランキングは以下の通りだ。 1位 Felicetti フェリチェッティトレンティーノ州トレントに1908年に設立。単一品種シリーズも出しているがフェリチェッティは事業規模的にPasta Artigianaleではないという声もある。  2位 Benedetto Cavalieri ベネデット・カヴァリエリ プーリア州レッチェ、マッリエに1918年に設立。スパゲットーニはアマトリチャーナと最高に相性がいいといわれる。  3位 Dei Campi ディ・カンピ カンパーニア州グラニャーノ ルマーケが最高というコアなファンも。 4位 Verrigni ヴェッリーニ アブルッツォ州ロセート・デッリ・アブルッツィに1898年設立。大型フジッリ、フジッローロの評価が高い。 5位 Martelli マルテッリ トスカーナ州ピサに1926年に設立。  6位 Vicidomini ヴィチドーミニ カンパーニア州サレントに1812設立。フラッグシップハパッケリ。  このランキングは100%イタリア産小麦を対象としているのでバリラは入っていない。そうした事情をあってか、今回の「100% Grano Italiano=100%イタリア産小麦」に至ったのは大きな方針転換である。バリラのマニフェストには、原材料となる小麦はイタリアの農業を支えるために極力地元=エミリア・ロマーニャ州パルマ、に近いパートナー企業のものを使用するなど10項目が掲げられている。また、これまで長年に渡って使用されてきたキャッチコピー「Dove c’e’ Barilla, c’e’ casa=バリラのあるところに家庭あり」も変更された。これまでフェデリコ・フェリーニら世界的な映画監督が手がけてきたバリラのTV CMは、イタリアの高度経済時代の象徴であり、仕事の後に家庭でのくつろぎ=パスタ、というのがメインテーマだった。しかしそれは徐々に現代イタリア社会にはそぐわなくなってきているのかもしれない。新しいコピーはサステイナビリティや健康、エコ、生物多様性など21世紀的なキーワードを感じさせる「Insieme sotto il cielo d’Italia=イタリアの空の下でともに」というもので、スカイブルーの新イメージカラーは「イタリアの空」を思わせるものだ。日本でもこうした新パッケージ、100%イタリア産硬質小麦使用をしたバリラのパスタが手に入るようになるのはまだもう少し先のことだと思うが、スーパーマーケット人気ランキングにも変化が生じるかどうか?注目して見守りたい。ちなみに新CMはこちらから。

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