イタリア料理界への死刑中止を求める声
12月に久しぶりに戻ったフィレンツェは様変わりしていた。クリスマスから年末年始にかけてはZona Rossa(レッドゾーン)がイタリア全土に適用され、ジェラテリア、バール含む全ての飲食店は5:00〜22:00の時間帯で営業が可能だったが、店内での飲食は全面的に禁止されテイクアウト販売のみ。また22:00〜翌5:00までは外出禁止令=Coprifuocoが発出され、準ロックダウンとも呼べる厳しい期間中には、ほとんどのレストランがシャッターをおろし、街中から人影が完全に姿を消していた。その甲斐もあってか、年が明けて以降随時見直されている州ごとの感染状況図ではトスカーナ州やサルデーニャ州、カンパーニア州などはもっとも規制がゆるいZona Gialla(イエローゾーン)へと解除が進みレストランやバールは18:00まで店内での飲食が可能になった。ピエモンテ州やエミリア・ロマーニャ州などイタリア本土の大部分もレッドゾーンとイエローゾーンの中間にあたるZona Arancione(オレンジゾーン)へと緩和されている。現在もZona Rossaの厳しい規制が続くのはミラノがあるロンバルディア州、シチリア州、そしてアルト・アディジェ州の3州、地域のみとなっている。 とはいえレストラン業界にとっては非常に厳しい状況が続くのは日本もイタリアも同じだ。過日、イタリアを代表するトップシェフたちが加盟する協会「アンバッシャトーリ・デル・グスト Ambasciatori del Gusto」(会長クリスティーナ・ボウワーマン Cristina Bowerman)はレストラン界の現状を訴える要望書を政府に提出した。”Perché condannare a morte la Ristorazione Italiana=なぜイタリア料理界に死刑宣告をするのか?”と題された内容を要約すると以下の通りだ。イタリア共和国総理大臣、全大臣、全州知事閣下 親愛なる大統領、親愛なる大臣および地域の大統領、 わたしたちイタリア料理界は崩れ落ちそうです。緊急事態が始まってからすでに10か月、何よりも辛いのは、支援や規制緩和を求めるわたしたちの声が決してあなたがたに届かないことです。わたしたちは忘れられているのではないか、とずっと考えて来ました。 「アンバッシャトーリ・デル・グスト 」は、常にイタリア料理の防衛や保護、世界的なプロモーションの最前線に立ってきました。また、わたしたちは常に業界全体が回復できるよう、あらゆる機関とも話し合ってきました。現在の目標は、イタリア料理界の全員が生き残って仕事が再開できるようになることです。シャッターが降りた店の背後にはその家族やスタッフ、多くの業者がいるのです。レストランが閉鎖されると代替手段が全くないので、わたしたちは代替案を提案したいと思います。規則、法令、安全性を遵守しMade in Italyの新しいイタリア料理界を政府とともに再構築し、きちんと管理された条件下でのレストランの再開を求めます。この夏の数ヶ月、わたしたちは多くの犠牲を払って新しい社会の基準となるべく多くの安全基準を満たすよう努力して来ました。そしてさらなる義務を自分達に課す準備もできています。あなたがたは完全閉鎖を臨むのでしょうが、隔日でもいいのでビジネスを継続できるよう再出発させて欲しいのです。 いままでの政府の対応は十分なものではありませんでした。必要なのは助成金ではなく、業界全体が再構築して再出発できるよう中長期的なビジョンなのです。わたしたちは将来の礎となるようこの機会に、社会を変えるための協力を惜しみません。ここに安全面から税制まで含めた、包括的かつ建設的な対話を望みます。このままでは世界が羨望するMade in Italyはそっくり根こそぎ無くなってしまう恐れがあるのです。 あながたに問います。イタリアの料理業界に死刑宣告をすることは果たして正しいのでしょうか?伝染病との戦争のために全てを犠牲にするのは正しいのでしょうか?そしてこれまでイタリア経済を牽引するだけでなくイタリア人のアイデンティティ、文化、ライフスタイル、そして人生そのものに貢献して来たイタリア料理業界を救う方法はまだなにか残されていますか? アンバッシャトーリ・デル・グスト
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