イタリアをめぐる徳吉洋二シェフのBENTO TOUR
以前紹介したように、ミラノの徳吉洋二シェフは現在本丸である「TOKUYOSHI」を一時休業しデリバリー&テイクアウトに特化した「ベントーテカ BENTOTECA」を運営、精力的に活動している。それは昨春のミラノ・ロックダウン直後から徳吉シェフが口にしていた「しばらくは以前のようなスタイルでお客さんに料理と空間を楽しんでいただくことは難しい」という考えから、いち早く新しい形態へと再スタートを切ったのだ。いまやイタリアにおいても「UMAMI」「SAKE」「MISO」「KATSUOBUSHI」など和食にまつわる料理用語もごく日常的に使われるようになったが「BENTO」という言葉は一般には知られていなかった。ミラノの病院への無償料理提供時に「BENTO」が持つ可能性を再認識した徳吉シェフはこのプロジェクトを発展させ、いまやイタリア人にも「BENTO」という言葉を定着させたその功績は非常に大きい。しかしコロナ第3波が訪れた昨秋以降、ミラノでの営業は再び店内飲食禁止となったことから(現在は18時まで可能)、徳吉シェフはプロジェクトをさらに一歩進め、ミラノ外にも「BENTO」を届ける「ベントー・ツァー BENTO TOUR」を開始したのだ。 これまでに回ったのはトリノ 、ベルガモ、ボローニャ、ブレーシア、モデナ、ジェノヴァ、コモ&ヴァレーゼ、パルマ&レッジョ・エミリアなど北イタリアの10都市。第1回目はトリノ市内限定で事前に注文を受け、ミラノからそれぞれの自宅まで届けたがこれはさすがに超ハードで、セコンドシェフのアンドレアとともに1日10時間車を運転することになった。そこで現在は方向転換し、各都市のEATALYと提携してPOP-UP BENTOTECAとも呼べる引き取り専用カウンターを1日限定で設置。予約した人はEATALYまで受け取りに行くというスタイルになっている。 2021年1月30日(日)16:00には初めてアペニン山脈を越えてフィレンツェのEATALYに登場。これまで毎回200食を販売しているという好調さはフィレンツェでも顕著で、わずか2時間の受け取り時間の間に、次から次へとイタリア人が現れた。今回注文してみたのは「SUZUKI ABURI BENTO スズキ炙り弁当」と「TEMAKI TARTARE 手巻きタルタル」前者は軽く火を入れたスズキの切り身、ズッキーニ、錦糸卵など見た目も綺麗な弁当のスタイル。下にはご飯が敷き詰められており、酢やほのかなごま油の香りなど、生に近い魚が苦手なイタリア人でも受け入れられやすい味付けになっていた。 後者はファッソーネ牛を細かく刻み、見た目はマグロのようなタルタルでトッピングはボッタルガ。下に敷き詰められたご飯を海苔で巻いて食べるのは日本の手巻きすしのスタイルで、卵黄とポン酢で作った専用ソースもセットに含まれている。とろみがあるソースは醤油よりも牛肉やご飯によく絡み、しかも風味や食感はマグロを思わせる。いずれも徳吉シェフがつねに標榜する日本とイタリアの融合、というコンセプトをハイレベルで表現したものだ。その背後にはイタリアの食材、料理に対する深い知識とフレキシブルな発想力が伺える。 次回のBENTO TOURは2021年2月3日ピアツェンツァ、2月4日トリノ、2月5日ノヴァラ&マジェンタ、さらにはヴェネツィア、再びフィレンツェという予定もあるので、今はまだミラノに行けないが徳吉料理を試してみたいという人にはまたとないチャンスとなるはずだ。 https://www.bentoteca.com/menu

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