地元レストランを支えるラ・モリサーナのランチ活動
現在イタリアではコロナ第4波が拡大しており、1ケ月半ぶりにほぼ全土が行動制限の第二段階「オレンジ=Zona Arancione」に指定されている。振り返れば世界で最初のロックダウンからすでに1年、いまだコロナからの完全脱却までは先が見えない状況だがモリーゼ州を代表するパスタ・メーカー「ラ・モリサーナ La Molisana」は地元カンポバッソのレストランでの昼食600人分を全従業員にプレゼント。従業員と地元レストランを同時に励まし、助ける活動を行っている。 「ラ・モリサーナ」は1912年、パスタ職人カルローネ家が工房を開いたことに始まる。1991年からは製粉会社フェッロ Ferro傘下となったが、同社が製粉する硬質小麦粉の中でも最高級のものを使用していることでも知られている。カンポバッソは標高700mというイタリア全20州州都の中でも最高地に位置しており「ラ・モリサーナ」は標高2050mのマテーゼ山から流れ出す上質かつ豊かな水源をパスタ作りに使用。それはモリーゼの自然の恵みを一身に集めたパスタ、といってもいいだろう。 今回のプロジェクトでは、300人の全従業員をそれぞれ1名の招待者とともに(合計600名)モリーゼ州内のレストランでのランチに無償招待、その費用は全て「ラ・モリサーナ」が負担する。これは全従業員に活気を与える特別なプレゼントであり、同時にパスタ・メーカーにとって重要なパートナーである地元レストランの経済も支えることになる。仮に1人5000円分のランチとすれば300万円が地元レストランに還元されるわけだ。金額的には少なく見えるかもしれないが、継続は力なり。今後も従業員と地元レストランへの連帯感を示し続けることは、先が見えない時代においても大きな活力となることは間違いない。 昨年来イタリアの食品産業ではこうした試みは昨年来頻繁に行われており、例えばツナ缶で知られるカラブリアのカッリポ社 Callipoは全従業員に100ユーロの特別手当を支給。ナポリのキンボ社 Kimboは同様に全従業員に300ユーロを支給し、バリッラ社 Barillaはイタリア国内外合計1万1000人の従業員にクリスマス特別ボーナスとして1000ユーロを支給した。「心に通じる道は胃を通る」という格言があるが、料理を通じて連帯感を高める方法は、コロナ禍においてできうる最もイタリア人らしい対応ではないだろうか。SAPORITAをもっと見る
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