パネットーネ・ソサエティプロデュースの初夏の柑橘パネットーネ限定発売
昨年11月、パネットーネをもっと楽しみたいという有志が設立した「
パネットーネ・ソサエティ」。食べる人、作る人の双方を繋げるために、セミナーやテイスティング会、ドリンク・ペアリングの提案など、さまざまな活動を展開している。本来は、クリスマスの伝統菓子であるパネットーネだが、こんなに美味しいパネットーネをほんの一時期だけに限ってしまうのは残念!ということで、初の試みとして初夏の気分に合わせたパネットーネをプロデュース。個数限定の特別頒布を開始した。
クラシックなパネットーネには、レーズンとオレンジピール(及びチェードロ)を使うのが決まりだが、今回採用したのは黄金柑。別名、ゴールドオレンジとも呼ばれる、日本原産の柑橘だ。発祥は愛媛県と言われているこの黄金柑、香りの良さ、酸味と甘味の絶妙なバランスが特徴だが、小粒でむきにくいところが敬遠されて作付けが減り、今では神奈川の西端や西伊豆でわずかに作られるのみ。ひとたび口にすると、どこかオリエンタルな印象をもたらす独特の芳香、心地よい酸味が後を引く。しかも皮も食べられるのだが、実と一緒に味わうとそのほろ苦さが甘味と相まってえも言われぬ境地へと誘われるのだ。こんな美味しいものが埋もれてしまっているのは惜しい、しかも、これから気温も上がる季節には、こんな爽やかな味わいのパネットーネが欲しいというわけで、「黄金柑のパネットーネ」のアイディアが生まれた。

製作をお願いしたのは、東京・麻布十番のイタリア料理店「ピアットスズキ」の鈴木弥平シェフ。パネットーネを作り続けて26年、日本では間違いなくパネットーネ作りの第一人者である。2019年にはイタリアの複数のパネットーネ・コンテストに出場し、ファイナリストともなっている実力者であり、オリジナル・パネットーネにはリンゴを始めとするさまざまなフルーツを使うことで、現地で注目された経歴を持つ。「黄金柑のパネットーネ」は、シンプルに黄金柑の持ち味を引き出すために、パスタ・ディ・アグルーミ(柑橘の皮と実を煮詰めたペースト。煮詰めない作り方もある)を仕込んでパネットーネ生地に練り込み、さらに、黄金柑のピールのシロップ漬けを混ぜて焼き上げ、仕上げとして表面に黄金柑のシロップをナパージュ。レーズンなど他のフルーツは一切使わずに、ひたすら黄金柑の風味を大切にした作りだ。
しっかりと焼き込んであるので、焼き色はかなり濃く、切ってみると内側はオレンジがかった黄金色。糖分の焦げたキャラメルのような香り、柑橘の爽やかな香り、乳酸の甘酸っぱい香りがふわりと立ちのぼり、口に入れるとその香りをたっぷりと含んだ空気が広がる。軽い弾力を感じさせる生地は、ほどけるようにして消え、後には黄金柑のピールの微かな苦味が余韻として残る。まさに初夏にふさわしいパネットーネである。合わせる飲み物は何がいいだろうかと考える。スパークリングワイン、それも、ロゼならば程よい果実味と渋みが黄金柑と調和しそうだ。
「黄金柑のパネットーネ」はパネットーネ・ソサエティの
サイトから購入できる。評判が良ければ、秋にまた、今度は違ったバージョンでの提案を行う予定だ。
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