第18回TASTE 注目はスイーツ、発酵菓子のバリエーションが増
小規模、アルティジャナーレなメーカーが集まる食品見本市TASTEが2月8日〜10日の三日間にわたってフィレンツェで開催された。スタート当初はかつての駅舎イベントスペース、スタツィオーネ・レオポルドで行われていたが、年々出展社が増え、手狭になったことから、主催するピッティ・イマジネの本拠フォルテッツァ・ダ・バッソへ移転。メイン・パヴィリオンの1階と2階、別館の1階を主要な展示会場としており、メイン・パビリオンにはハム・サラミなど加工肉食品、チーズ、パスタ、米、オリーブオイル、ジャムやソース、ハチミツ、ジュース、塩やスパイス、肉、卵、魚介製品、乳製品、ワイン、ビールなど多種多様なメーカーが並び、別館は主に菓子、スピリッツのメーカーが集められていた。 TASTEの特徴は、イタリアの小規模生産者が出展することのほかに、それぞれのブースがほぼ同じ大きさで見やすいこと。CIBUSなど他の見本市は出展社によってブースの大きさに差があり、予算のあるなしがはっきりわかるが、TASTEではそれがない。ピッティ・イマジネの発表によると今年の出展社数は770社に上ったが、全てがコンパクトに整然と並んでいるため、訪問者も効率よく見て回ることができる。ただ、以前は、一般人の入場にも力を入れていたが、見本市という性質上BtoBを優先する傾向が強まり、今年は三日間のうち、一般入場は土曜と日曜の午後4時間のみに制限されていた。また、TASTE SHOPとして、出口に設けられていた直販コーナーは廃止され、購入希望者は各社のオンラインショップヘ誘導されるという仕組みになった。入場券を購入した人は割引クーポンが付与されるという特典付きである。海外バイヤーはサンプルをブースで入手したり、後日送付してもらうことができるが、イタリア(ヨーロッパ)国外の一般人が商品を購入したいと思っても叶わないシステムになったのは少し残念である。
ペスト・ジェノヴェーゼなどバジリコ加工製品も躍進。
今回の会場を回って特に気になったのは、バジリコのペーストなどバジリコ製品に特化した生産者が目についたこと、そして、イタリアのキャビア生産者の出展が増えていたこと。バジリコ製品はイタリア、特にリグーリアの特産品であり、国内はもとより、海外からの注目度も高まっているという。しかし、賞味期限が短く、特に要冷蔵のペスト・ジェノヴェーゼとなると賞味期限30日間などという製品も珍しくなく、海外バイヤーにとっては難しい商品である。それだけに味、とりわけ香りは素晴らしく、そして美しい明るい緑色は何よりも魅力的である。キャビアは、北イタリアで伸び著しい分野で、ロシアやイラン産の入手が難しい今、イタリアでは注目の高級食品。イタリア・チョウザメの卵をベースとするイタリアオリジナルのキャビアや、アルビノのチョウザメから採れる黄金がかったベージュ色のゴールデン・キャビアなど種類も豊富。パッケージも美しく、バレンタイン向けリミテッド・エディションといったシーズナルデザインも凝っていた。 別館は菓子中心、パーティションを設けて一部スピリッツコーナーとなっていたが、どちらも盛況。菓子は焼き菓子、それも発酵菓子が多い。ブリオッシュなどの小型のものよりも目を引くのはグランディ・リエヴィターティと呼ばれるパネットーネなどの大型発酵菓子だ。以前に比べてその数も種類も増えており、人気の高まりが伺える。パネットーネ、パンドーロのほか、ブッソラ(またはボッソラ。ブレーシャのクリスマスの伝統菓子で、中央にくぼみ、あるいは穴が空いた形状)やナダリン(ヴェローナの伝統菓子で、パンドーロの原型と言われる)も登場し、華を添えていた。ユニークだったのは、ナダリンのアレンジで、パスティッチェリア・ロレンツェッティが提案していた「アゴスティン」。クリスマス菓子であるナダリンはオレンジの香りが特徴のバター生地だが、夏向けのアゴスティンはより爽やかなレモン風味。食感も軽く、夏と言わず通年楽しめる発酵菓子だと感じた。また、プーリアのベーカリー・ペンナが一押し商品として勧めていたのが「イル・パネットーネ」という名のパネットーネ。オレンジピールなど柑橘の皮のコンフィを好まない子供にも楽しんでもらうため、“ゴッチェ・ディ・リモーネ(レモンのしずく)”なるものを独自開発、生地に練り込んで、姿は見えないけれどレモンの香りと甘酸っぱさが鮮やかに広がるパネットーネを仕立てた。そのほかにもローフ型のバウレットと呼ばれる形状のパネットーネやナダリン、ヴェネツィアーナなど、大型発酵菓子をもっと日常に楽しんでもらいたいという作り手の工夫が各所で見られるなど、トレンドの一端を体感できるのがTASTEの魅力である。        

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