世界自然遺産を体感するエコツーリズムリゾート、「西表島ホテル by 星野リゾート」の旅(前編)

「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる西表島は天然記念物イリオモテヤマネコが生息することで名高く、2021年にはユネスコの世界自然遺産に登録されたことで世界的な知名度も大幅に向上した。島は大原港がある東部と上原港がある西部の2つの地域に大きく分かれており東部には仲間川や水牛車で渡る由布島が、西部には沖縄県最大の落差を誇るピナイサーラの滝、沖縄県最長の浦内川などがあり、島全体が豊かな自然に覆われている。特に汽水域に広がる広大なマングローブ林は日本とは思えないスケールで、緯度的に見れば台北よりも南に位置するので亜熱帯の空気が感じられる。

自然保護のため交通やインフラなどに厳しい制限がある西表島ではホテル選びは重要だ。大自然を体感できるカヌーやダイビング、トレッキングなどのアクティビティが充実しており、そんなアウトドア体験から帰ってきたら寛げるホテルがいい。時にはプールやビーチで過ごしたいし、沖縄料理も楽しみたい。そんなわがままを叶えてくれるのが「西表島ホテル by 星野リゾート」だ。

石垣港からフェリーに揺られること1時間10分、西表島の入り口である上原港に着く。ここから専用の送迎車でホテルに迎う。途中上原小学校間にある信号を通過する。初めて西表島を訪れた30年前はこれが島に唯一の信号だったが現在には大原にももう一つ信号ができたとホテルのスタッフが教えてくれた。これは島の子供たちが将来島を出た時に初めて信号を見て戸惑わないようにとの配慮で、小学校前に設置してあるのだ。また西表島では制限速度も最高40kmに設定されている。これはイリオモテヤマネコやカンムリワシなどの野生動物との不慮の事故を避けるための制限なのだが、人にも動物にも優しい西表島がよくわかるエピソードだろう。

「西表島ホテル by 星野リゾート」は西表島の自然環境を保護しつつ持続可能な観光を提案する日本初の「エコツーリズムリゾート」を目指している。その一環として、2021 年春からは「エコロジカルなホテル運営」「島の魅力と価値を感じるネイチャーツアー」「イリオモテヤマネコの保護活動」の3つの取り組みをスタートした。まずホテル内ではペットボトルの提供や販売は行わず、予約時にマイボトルを持参することがゲストに通知される。アウトドア体験する際には館内にあるウォーターサーバーで各自が飲料水を確保してトレッキングなどに出かけていくのだ。というのも西表島内にゴミ焼却施設や公共のゴミ箱はないので、こうしたプラスチックゴミは船で石垣島まで運ばれる。ゴミ箱に残した飲食物にイリオモテヤマネコなどの野生動物が群がる光景を想像すれば自ずと環境への意識も高まるはずだ。またホテル内でもゲスト用ランドリーには洗剤を使用しないスマートランドリーを導入。バスルームに用意されているのもシャンプーとボディソープが一体となったオールインワンスープと、いずれも環境に与える影響を最小限にする試みだ。

ネイチャーツアーは「イリモテガイドウォーク」はじめ、「イダの浜で遊ぼう」「夕暮れマングローブカヤック」などさまざまなアクティビティが用意されており、初心者や子供でも楽しめる。また「イリオモテヤマネコ痕跡ツアー」 や「イリオモテヤマネコの学校」を通してイリオモテヤマネコの生態をゲストに提供し、自動車事故を防ぐ「ロードキル防止」に向けた取り組みを行っている。今回は「西表島ホテル by 星野リゾート」に滞在し、こうしたさまざまなアクティビティに参加して西表島の魅力をさまざまな角度から紹介したいと思う。


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