シチリア美食の王国へ37 オキシディアーナ@カターニア

カターニアに登場した異色の日本料理

エトナ山麓のワイナリー「ベナンティ」が経営するエノテカ・リストランテ「トレ・ビキエーリ」が開店した1999年末、和食のエッセンスを加えた料理がカターニアで話題になった。当時ホールを任されていたのはタオルミーナのナウティルスから離れたエヴァ・シューベルト夫妻、厨房に日本人の料理人も数人いて海老の串揚げやカツオのタタキとかを食べた記憶がある。それ以前にはカターニアで和食なんて誰も考えなかったことと思う。二度に渡りシチリアを一周した95年と99年、パレルモ、カターニア、タオルミーナ、どの街でも日本食レストランなど一度も見かけなかった。中華料理店でさえパレルモで見かけたのみ、とにかく食べ物に関しては保守的なイタリアの中でも特に自分達の食のテリトリーにこだわるシチリアでは外国料理を導入するのは容易では無い。しかしこと日本食に関してはミラノで始まったイタリア全体の和食ブームがついに海を越えてシチリアの地まで到達したのか、今花開きつつあるようだ。パレルモでは「グルメ・バー」が平日でも予約で一杯の賑わいをみせる中みせているが、それに先駆けること半年、ここカターニアにもついに初の日本食レストランがオープンした。

「オキシディアーナ」はワインバー&和食レストランの形態で昼はビジネス・ランチ、夕方はアペリティフ・タイムトルツメ、夜が寿司を中心とした和食&シチリア料理という構成である。女性オーナーが当時ドイツの日本食レストランで働いていたAKIRA氏と知り合い「オキシディアーナ」オープンに際してカターニアへ招いたという。地元アーティストが手掛けたミラノを思わせる都会的なインテリアと寿司という今風の組み合わせが話題を呼び、地元紙にも記事が掲載された。和食のメニューは意外と幅広い。お任せで刺身の盛り合わせと握りの盛り合わせを頼む。刺身はキハダマグロとイカ、サーモンとイクラ、褄にはシチリアらしくイチジクの実とタロッコ、全て新鮮、上質の刺身だった。握りはキハダマグロ、甘エビ、アナゴ、タコ、サーモン、トマトを乗せた裏巻き。一緒に焼き鳥と海藻サラダなどをとる。日本の味である。

しかし残念ながらペスケリア市場で見かけるカターニアの海そのものである食材、例えばウニ、ファゾラーリ、タルトゥーフォ・デル・マーレ、トコブシ、カジキ、鯛、セッピオリーノなどはメニューに無かった。イタリアの日本食レストランで食事をしてつねに思うのはこうした地中海の恵みを日本の寿司屋感覚で食べられる店が未だ出会えないことである。素晴らしい市場を持つ街だけにアンティカ・マリーナやイル・クチニエレで食べさせてくれるような新鮮な食材を日本の調理法でシチリア人に提供したらどんな反応が得られるだろうか。地中海のウニの軍艦巻きや、タルトゥーフォ・デル・マーレやマッツァンコッレの握り、大西洋マグロのヅケ、イワシ、アジ、サバなどの青魚。シチリアの豊かな海から新たなる日本とイタリアの出会いがそろそろ生まれてもよい頃なのでは無いだろうか、とサーモン握りをほおばりつつ思いは再び市場へと飛んでいた。

Oxidiana(オキシディアーナ)
Via Conte Ruggero,4/a Catania
Tel095-532585
www.oxidiana.it  info@oxidiana.it
日曜休み 予算目安:30ユーロ
テイクアウトもあり