第三回Banco d’assaggio olio DOP
キャンティ・クラシコ協会が母体となって開催する、イタリアのDOP(原産地呼称保護)オリーブオイル試飲会に参加。今年で三度目となる本会は生産者とジャーナリストに向けた非公開のもので、そのせいかいつもかなり地味目である。今回のテーマは、「DOP、その認知度をいかに上げるか」。曰く、DOPという言葉はだいぶ浸透してきているけれど、果たしてその意味を把握しているのはイタリア人20人に1人の割合。このテーマのもと、TVや新聞のジャーナリストがパネリストとして、それぞれの意見を述べる、というのが試飲会前のコンファレンスの趣旨であった。
大半のパネリストは自分(や自分が属する媒体)がいかにDOPを取り上げた記事や番組を制作しているかという自己礼賛な路線に終始したけれど、ところどころ、興味深い話もあった。たとえば、「DOPそのものに対する認知度は、女性よりも男性のほうがが上」という話。それは、女性は家庭の食生活を御する立場としては価格に敏感で、そのぶんクォリティへの留意は不足する傾向にあり、一方、男性は”趣味的に”より良いものを求めるゆとりがあるので、ガイドブックなどを参考に新しい知識を積極的に吸収するという内情を反映したものだという。
また、「若い人はextra vergineをサラダや肉料理など生で味わう時に、揚げ物や加熱にはvergine以下のオイルを、一方、年配の人は生で味わうときにvergine以下を、加熱用にextra vergineを用いる傾向がある」という。これは、若い人はより刺激的な味を好み、年配者はマイルドなものを好むことの表れである。
「DOPへの認知をより幅広く深めていくにはどうしたらいいか」という問いに、とあるパネリストは「もっとスーパーの棚にもDOPオイルを並べるべきだ」と提案した。猫も杓子もDOP的な節操のない路線を目指すのであればそれもアリかもしれないけれど、生産地域の土地特性と高品質を唄う目的であれば、それはちょっとあり得ない方策だろう。往々にして「そんなバカな」と思わせる手段にも打って出るのがイタリアなので、近い将来、DOPオイルが薄利多売オイルと同じ扱いを受けている可能性はないでもない。
ジャーナリストでオリーブオイルテイスターでもある知己は、すでにDOPオリーブオイルはアブナイ方向に走りつつあると苦言を呈する。たとえば、サルデーニャは島全体がDOP指定となっている。総面積23800平方キロメートル(ってどのくらい?)の広大な土地は土壌も気候も均質なわけがないのに、十把一絡げに「サルデーニャDOPオリーブオイルです」とまとめてしまうとは無謀極まりない。でも、そのほうがアピールすると考えての結論なのか、消費者のことをまったく無視した政治的策略の匂いがプンプンしているなぁと思ったけれど、よく考えてみたら、このDOP、そもそも、生産者を保護することを大前提としている。消費者は守られた生産者が提供するものを評価する手だてを独自に見つけなければいけないのかも...。mnm
難しいですね。消費者としてはやはり格付けや区別があったほうがその個々の特性を知ることが出来たりと選択に役立つと思うのですが、島全部が・・・っていうのは素人目にもちょっとどうなんだ?って思ってしまいます。
でも格付けにかかわらずスーパータスカンみたいに価格高騰するワインがあるお国、なんだかオイルのそれもうなずけるような気もします。
SZさん、いつもありがとうございます。
ワインのDOC、DOCGの形骸化も長らく議論の対象になっていますが、政治的駆け引きとか、我田引水に熱中しやすい国民性が大きな障害になっているようで、改良は遅々として進んでいませんね。
同じ道を歩みはじめているDOPオイルの将来もあまり明るいとは言えませんが、サルデーニャのような広大なDOP認定ではなく、たとえば、シチリアのモンテ・イブレイ地区のようにその中でもさらに細かく地域が分かれているところとか、ウンブリアのように州全体がDOPに指定されていても、それぞれさらに区分けされているようなところは、そもそも優れたオイルの産地だからそういう結果となっていると想像することはできますね。
要は、与えられた情報をうのみにせず、消費者も勉強しなさいよ、ってことなのかもしれませんけど...。