La Pergola@Roma

2005年の取材以来、いつかはと思っていたラ・ペルゴラ。この3年余りのうちに三つ星を獲得、当時も政財界のご用達ゆえ予約のとりにくい店だったが、さらにハードルが高くなってしまった。が、Buca dell’OrafoのR太君の「行ってみたいんです」のひとことをきっかけに「じゃ、行こう行こう」とこの度の初訪店が実現。希望する日まで2週間切っての予約メールに、先方から速攻で電話が来、「他の日に動かせないか」との打診。店をそうそう休めないR太君達をダシに「いえ、どうしてもその日で」と押し通す。果たして当日は2回転する卓もあるなど、休み明けとは思えない盛況ぶりでありました。
メニュは見開き片ページにメニュ・デグスタツィオーネ、もう片ページにアラカルトで、メニュ・デグスタツィオーネとアラカルトにダブリはほとんど見られない。アラカルトは一品平均およそ50ユーロ、一方デグスタツィオーネは6品で170ユーロ、9品で195ユーロとどう考えてもお得なので、9品コースにした。昨今食力が落ちてきているので6品でいいかな...と実は弱気になっていたのだが、Borgo San JacopoのK君が「ダメだと思ったらパスしてください」と言ってくれたので9品コース。でも、実際には、どれも本当に軽い仕上がりで一度も援護を受けることなく終点までたどり着けた。
メニュ外のアミューズ(一口サイズのブリ、マグロ、イワシ、ヤリイカ。一個が本当に小さな、不●家ミルキーサイズ)の後、Tonno crudo su amaranto con carciofi liofilizzati(ごく軽くマリネしたマグロとアマランサスのプチプチ感、そして生姜の風味が妙にジャポネーゼ)、Cilindro di scampi con olio d’oliva polverizzato e vinaigrette di tapioca(顆粒状のオリーブオイル、りんご酢風味のタピオカなどさまざまなテクスチャーの世界)、Fagottelli “La Pergola”(至極滑らかなパスタ、ふわりと溶けた中身のチーズ、納得の看板料理)、Caponata di triglia con bon bon di menta e miele(口直しに先に食べろと指示された、くるんと丸めた淡雪ミント、ヒメジのタルタル、ちょっと印象は薄かった)、Raviolo di rombo con gamgeri rossi, zuppa di lenticchie e basilico palla(菱形の魚を菱形のラビオリ見立て、さっくりとした食感が意外で楽しい)、Medaglioni di astice e fegato grasso d’anatra con aria di lime e germogli di piselli(昨今イタリアでも流行っているもやし系若芽の青くささもいいけど、雲が晴れるようにさぁっと口中で消えるカモの肝、絶品)、Filetto di vitello marinato allo yogurt su pure’ di pesce e salsa mou(これほどまでに柔らかな仔牛のフィレは初めて、昇天の心地)といった数々が、テンポよく次々と運ばれてきたため、時々、カメリエーレが椅子の背もたれにぶつかるのも、「ま、ローマだし?」と許せてしまう。
チーズに続いては、甘党が滂沱の涙を流すに違いないデセール攻撃。温かいドルチェ3種、冷たいドルチェ4種、その合間にオリジナルで作らせた銀製の小引き出し(全12段)のプチフール、最後にこれまたオリジナルの銀製ティッシュケースは蓋を開ければ森●のピノ状一口サイズのチョコレートがけアイスでだめ押し。8時過ぎにGossetのロゼで開始した宴は12時をとうに回ってから閉幕した。帰り際にかつて「エスプレッソ」だったかが、migliore maitre d’hotelと評したSimone Pinoliからメニュのプリントアウトを手渡されたのだが、そこにその晩選んだワインも記されていて、ちょっと感激。空きスペースにHeinz Beckの顔写真シールが貼ってあるともっと嬉しかったなぁ...因にSimone君、記念撮影のシャッターを押してもらったけど、写真はヘタ。全員の全身が写っていたのは生真面目さゆえか。
幼児連れの一家のテーブルではミニカーがぶちまけられ、ローマ娘3人組は嬌声をあげながら15分おきにタバコを吸うために出入りしていたけれど、それにも鷹揚な気持ちでいられるほど美味しく、イタリア人がよく言うeuforia(幸福感)に浸った一夜。美しい思い出となりました。mnm
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