ウインナー・シュニッツェル考

オーストリアの名物料理は何か?と問われて、パラチンケン、バウエルン・プファンドル、あるいはフィアカー・グーラッシュなどど答えたら相当な変わり者で、大抵は十中八九「ウインナー・シュニッツェル」と答えるでありましょう。このウインナー・シュニッツェルとはご説明するまでもなく子牛のカツレツのこと。よくミラノ風カツレツ「コ(ス)トレッタ・アッラ・ミラネーゼ」と比較賞賛されますが、その由来に関しては諸説紛々。まことしやかにささやかれているのはオーストリアのヨーゼフ・ラデツキー将軍が北イタリア遠征の際、ミラネーゼの美味しさに打たれ、ウイーンにその製法を持ち帰り、広めたとするもの。ウィキペディアによればなぜかナポリより持ち帰った、とあります。

このラデツキー将軍はロンバルディア・ヴェネツィア王国の総督となったり、サヴォイア家率いるサルデーニャ王国をノヴァラでの戦いで破ったりと、イタリア統一を悲願とする統一の志士たちにとっては目の上のたんこぶ。ヨハン・シュトラウス1世はウイーンのニューイヤーコンサートでおなじみ「ラデツキー行進曲」を存命中に作曲し、ウイーン市内にはラデツキー将軍の胸像が残ってます。

で、あらためて食べ比べてみるとミラノではコ(ス)トレッタとも呼ばれるように骨付き肋間肉を使うのに対し、こちらでは骨無し。なので出来上がりを見ると結構反り返ったりしてます。薄く叩いている店もあればそのままの店もあり、豚肉や鹿肉、鶏肉のシュニッツェルもあります。森のジャムをつけて食べるかどうかはお好みで。パルミジャーノは入れてないようですがミラネーゼも本来は入れないのが正統らしく、こちらもバターで揚げてることからフライパン使用のはず。片面揚げだと上面から余分な水分が蒸発し、全面揚げに比べるとかりっ、さくっと揚がるのが特徴、といわれています。インスブルック旧市街の某老舗店では皿が熱々に熱してあり、冷たいサラダは別盛りで出す、という気遣いを見せてくれました。基本的にこちらはワンプレートディッシュなので皿はでかくて重いですが、女性給仕のかたでもこの重い皿を両手に3つぐらいは軽々と運んでしまうのを見るとたじたじとなります。MASA