週間食卓日記Firenze編

2010年8月某日
Donnabenci@Firenze
Via dei Benciにエノテカ・レストランが出来たと聞き、ちらりとのぞいてみるとスタッフの女性陣が「のぞいていけば」というので昼時にもかかわらず邪魔させてもらってついで地下のカンティーナも見せてもらって、ついでに料理も一品用意してもらって撮影もする、という予定外の行動。コンディションのいいチーズ盛り食べながらフランチャコルタを一杯、のつもりがつい二杯。女性スタッフと話してるとどうもイタリア人ぽくない感じがするので聞けばみなブラジル人だとか。向かいにある老舗PUB、KIKUYAのスタッフだったらしい。

この店がいいのはカウンターがあることで、小箱&カウンターのイタリアン&フレンチに慣れた東京の人にとっては懐かしく使いやすそうだが、フィレンツェにしてみれば新鮮。ブラジル人ならではの自由な発想の店作りだが、なぜフィレンツェにはヴェネツィア風やバルセロナ風の店が増えない?相も変わらず酒のつまみはクロスティーニじゃ客もそのうち飽きるぜよ。カウンターの端にグリルがあり、仔羊とかトリッパとかちゃちゃっと炙ってサルサ・ヴェルデでもかけて出してくれるような店の登場乞う。

ちなみにこうしたコンディション良いチーズをあれこれつまむのは家庭で出来ない、エノテカ&ワインバーならではの楽しみでフィレンツェならVolpi e L’Uva。リストランテならブレシア近郊のMiramonte l’altroとローマのChecchinoがいずれもすばらしいワゴンサービスでございました。

2010年8月某日
Baldobar@Firenze
今は無くなってしまったが一時はフィレンツェでもいけてたBeccofinoやBaldovinoなどを経営するスコットランド人の最新作。とはいえBaldovinoの一コーナーを改装してノンストップ営業のカフェ・スタイルにしたものだが、できそうでなかなかできない作りが心地よい。パリあたりにありそうな感じのベンチシートにもたれてメニューを開けば、エストレージャの生ビール発見。これはバスク地方はサン・セバスチャンやバルセロナのバルをはしごした人には懐かしいスペイン・ビール、と思ってよく見たらメキシコ産生ビールだったとは知らなかった。キッシュ・ロレーヌ、チキン・サンド。しけたバールで立ち食いかさかさパニーノに出会い、イタリアのバールって百年一日でださい、と日々思ってる人にはきちんとイタリアの遺伝子を受け継いだ新鮮なカフェめし。

2010年8月某日
Vianino@Firenze
7月に早めの夏休みをとるVinainoなので気づけばここ2ケ月ほどごぶさたしていた。「いつもの」Antipasto della nonnaつまりおばあちゃんのアンティパストはいつも真宅同じでズッキーニのグリル、ナスのグリルのオイル&アチェート漬け、ポモドローリ・セッキのオイル漬け、酢漬けカルチョーフィ、そしていつも「大盛り」で頼む小玉葱を甘酸っぱく煮たチポッリーネ・イン・アグロドルチェ。ついで頭から湯気が立ち上るような唐辛子とニンニクが効いた「いつもの」スパゲッティ・アッラ・カレッティエラ、ローストビーフ&ポテト。いつもの店のいつもの良心。

2010年9月某日
Gozzi@Firenze
こちらも夏休みが開けて再開した、サン・ロレンツォ中央市場近くにある昼のみ営業の老舗トラットリア・ゴッツィ。子牛のカツレツをトマトソースで煮込んだ、いわばカツカレーと同じ思考の料理グラチョーレ・リファッテとウサギのフリット&ポテト。隣のアメリカ人グループがこちらの料理をじろじろと覗き込んでそれは何だ?と聞くのでブラチョーレ・リファッテだ、と答えると今度はそれはどういう料理だ?とさらにしつこく聞くので詳しく知りたきゃ店のスタッフに聞いたらいかが?と答える。さらに相方のフリットを見てそれは何のフライだ?と聞くのでウサちゃんだよ、ぴょんぴょん、と答えると「クレイジー」とのたまう。そこで、それは料理を作ってるこの店がクレイジーという意味なのかな?と問うと、米国の客人一同、店のスタッフと目が合い、沈黙。ハンバーガーをご所望されるならゴッツィでなくサンタゴスティーノ23がいいですよ。

2010年9月某日
Il Latini@Firenze
ビステッカ待ちの行列が絶えないことであまりにも有名な老舗イル・ラティーニ。19時30分の開店を待つ客と、その客をガラス越し見ながらスタッフは中でまかないを食べるというシュールな光景が日々繰り返される店である。しかしツーリスティックとあなどってはいけない。実は店内は奥が広く、100人ぐらいは軽くさばけるので行列する必要もないのである。パンを一度揚げ、給食の揚げパン状態にしてから出す名物クロスティーニと回転がいいため、コンディションがよいパルマの生ハム。さらに花ズッキーニのフリットをつまみながらビステッカの焼き上がるのを待つ。その前に店主夫妻が「ちょっと焼き場に見に来い」というので厨房奥のグリル台に行くと炭火の上には8ケあまりのビステッカが焼かれていたのだが、ホントのグリル長はその3倍でつまりキャパも3倍。ビステッカの注文がばんばん入って忙しい時には30〜40ケぐらい一度に焼けるのである。で、そのビステッカはという熟成香と甘味がバランス良い逸品。フィレンツェにビステッカの名店数あれどここもまた必食の一件であるようで、一度食べれば数年はその思い出でビステッカを語れる、かもしれない。MASA