Di Matteo@Napoli

ナポリ下町の極地にしてピッツェリア超激戦区、スパッカ・ナポリのトリブナーリ通りに 「ディ・マッテオ」はある。スパッカ・ナポリの多くのピッツェリア同様「ディ・マッテオ」もいわゆるスップリやアランチーノ、さらには揚げピッツァ「ピッツァ・フリッタ」などを売る揚物屋フリッジトリアとして1938年に営業を開始した。創業者である祖父サルヴァトーレ、そして父ヌンツィオの代からすでに人気店であったが、1974年生まれの孫サルヴァトーレ・ディ・マッテオは現在のナポリでを代表する実力派ピッツァイウオーロである。

ナポリのピッツァ・ファミリーのご他聞に漏れずディ・マッテオ家は当然のごとく一家全員ピッツァイウオーロで、孫サルヴァトーレの母ジュゼッピーナは彼を産む直前まで「ディ・マッテオ」で働いていたという逸話が残されている。

ナポリの英雄マラドーナが「神の手」の持ち主ならば、サルヴァトーレは「粉まみれの手」で生まれてきたと自らについて語る。現在のように日曜の昼時ともなれば店の前に文字通り黒山の人だかりができるようになったブレイクのきっかけは、あの1994年のナポリ・サミットの最中。当時の村山富市首相は慣れないオリーブオイルで体調を崩したが、当時の米国大統領ビル・クリントンは「ディ・マッテオ」を訪れ、ピッツァを四つ折りの「ポルタフォッリオ」にして立ち食いするという派手なパフォーマンスを見せ、ナポリ中から熱狂的な歓迎を受けたのである。

孫サルヴァトーレは、競技部門で目覚ましい活躍を残し、2011年9月に行われた「ピッツァ・ワールドカップ」のマルゲリータDOC部門で必殺ピッツァ「リピエノDOC」で優勝。2012年には第15代「 Pizzaiuolo dell’anno=年間最優秀ピッツァイウオーロ」にも選ばれた。

店の入り口にはピッツァ・フリッタなどテイクアウト・ピッツァを売るスタンドがあり、テーブル席は左手にある。とりあえず頼むのはマルゲリータ、そしてブロッコリに似たナポリ野菜フリアリエッリ&サリシッチャ。トマト抜き、いわゆるビアンカなピッツァはいかに飽きさせずに一枚完食させる仕上がりになるか、が腕の見せ所でもある。前者マルゲリータが大人も子供も大好きな郷愁のトマト味ならば、後者は苦みばしった大人の味。父ヌンツィオは最大6時間発酵で、最近流行の48時間発酵とは異なる哲学を持つがそれでも非常に軽く、腹こなれのいいピッツァであることに間違いは無い。

http://www.pizzeriadimatteo.com