サラミ&生ハム祭りSalumi da Re開催@Polesine Parmense(PARMA)

4月12日から14日までの3日間、サラミ&生ハムのイベントSalumi da Re第一回が開催された。 北はトリエステから南はカラブリアまで、サルーミ(サラミやハムなど加工肉食品)の生産者が集まり、会場となった農園レストランAntica Corte Pallavicinaの門から建物までのアプローチにずらりとスタンドが並んだ。このVia dei Salumi(サルーミの道)を行けば、各地のハムやサラミを一度に試食できるというわけである。食のイベントは数あれど、サルーミだけを集中して食べ比べるという体験はなかなかできない。

イベントは、食の“総合メディア”ガンベロ・ロッソ社と会場となったレストランによる共同開催。試食スタンドのほか、場内に設けられた特設ステージで料理人 によるデモンストレーションや、サルーミの未来についてのレクチャー、プロによるサルーミの正しい味わい方教室、ピッツァとサルーミの「融合」(ピッツァ 生地に包んで焼いた豚肉)などといったプログラムも用意され、また会場レストランではサルーミをテーマにしたブッフェランチやディナーも楽しめるなど、と にかくサルーミづくしの三日間である。

“サルーミの道”は基本的に試食中心で、販売目的ではない。でも、多少は販売品も用 意しているところもあり、気に入ったものを購入することもできる。ただ、サラミや小分け真空パックのプロシュート・アロストは持ち帰る気も起きるが、生ハ ム足一本丸ごとはさすがに持て余すし、スライサーがなければせっかくの美味しさを享受することは難しい。切りたてをすぐさま口に放り込めないのであればま こと宝の持ち腐れとなる。

ともかく、まずは片端から試食である。プーリアのマルティーナ・フランカからやってきた Salumi Martina Franca社の「パニョッテッラ」は腸詰めせずに手で丸めた上に硬質小麦のふすまで覆って熟成させたサラミで、独特の香ばしさが特徴。ローマ近郊のIl Norcino社は細長く切った豚の干し肉が名物。すごく美味しいというわけではないが、伝統の味、素朴な滋味が好きな人にはたまらないらしい。パルマの 北西、クレモナはクラテッロの産地Zibelloに近いのに気候が異なるため、できるハムも味わいが違う。ヴェネツィア郊外の生産者が作る熟成発酵させな いラルドは限りなく生に近く非常に甘く、しかし、生とは違うなめらかな口溶けで、まさに危険な誘惑。

フィレンツェではトス カーナの生ハムやサラミ、あるいはパルマかサン・ダニエーレの生ハムくらいしか選択肢がないが、ここではボローニャ名物モルタデッラの原型と言われるサ ラーメ・ローザも、トリエステ名物プロシュート・コットも、低地パルマの伝統スパッラ・コッタも、唐辛子を練り込んだカラブリアの真っ赤なサラミも味わえ る。極めつけは、ウルビーノからやってきた女性が手がける、1500年代のレシピを再現したというサルチッツァ・ジャッラ。サフラン他香辛料を多めに使っ た小型のサラミで、保存食としてのサルーミ本来の性質を強く感じさせるしみじみとした味わいである。現代の洗練されたサルーミとは全く別次元の美味しさで あった。

会場ではガンベロ・ロッソのガイドブックや料理本の販売コーナーもあり、昨年末に発売されたばかりのサルーミガイ ド「grandi salumi」も平積みされていた。253生産者、600種のサルーミ、200の販売店を紹介したハンディな一冊で、優れたサルーミにはサラミ3枚マーク (トレ・フェッテ)を進呈するというガンベロ・ロッソお得意の評価つき。また、OGMフリー、グルテンフリー、ビオ、酸化防止剤および保存料フリー、黒豚 使用などが一目でわかるマークもついている。サルーミ行脚の旅には必携の書である。

ところでこの祭り、わずかな時間しか滞 在できなかったが、それでも大満足であった。サルーミの比較試食とはすなわち、旨味の波状攻撃を受けるようなものである。舌の疲弊は、大して量は食べてい ないはずなのに満腹中枢を刺激する。つまりもしかして、サルーミ・ダイエットなんていうものが可能かも、と思ったりもしたが、明らかな塩分の過剰摂取、い くら赤ワインで流しても流しきれずに昇天するに違いない。