フィレンツェ美食散歩10 ガルガ

派手な色に塗られた壁、その壁に掛けられたシュールな絵、オブジェや彫刻。一見するとちょっと危ない感じがしないでもないが、ここはフィレンツェの他のどこの店とも違う独自のスタイルを八〇年代に確立したトラットリア。内装だけではなく、料理も、である。

郷土料理は長時間加熱が基本である。フィレンツェのトラットリア料理もじっくりと火を通したものが多い。しかし、「ガルガ」の料理は、加熱を必要最低限におさえ、素材の風味を充分に生かすことに焦点が当てられている。オーナー、ジュリアーノ・ガルガーノはこれをクチーナ・エスプレッサ(即席料理)と呼び、フィレンツェ庶民料理界に一石を投じた。

作り置きはトマトソースを除いて一切なく、注文が入る都度、パスタをゆで、同時にソースを作る。パスタはゆで時間の短いスパゲッティーニか生麺。そのわずかな間にできるソースだが、これが実に鮮烈な味わいを放つ。

花火のように真っ直ぐ打ち上がったパスタ料理は、一瞬にしてそのピークを過ぎる。テーブルに供された瞬間からひたすら食べることに集中して、その刹那的な味の世界に没頭しなければならない。でも、それが本来、正しいパスタの食べ方なのだ。

Via del Moro, 48r Firenze
055-2398898
19:30~22:30
月曜