カターニア、ペスケリア市場の現在

カターニアのドゥオモ周辺に広がる現役バリバリの市場がペスケリア市場だ。野菜や肉、八百屋もあるがあくまで花形は広場一杯、道一杯にせり出した魚介類を売る屋台。「シチリア美食の王国へ」ではじめてこの市場を訪れた2002年には、市場にみなぎる圧倒的な生と死のエネルギー、混乱と猥雑、騒音と興奮で頭がくらくらしたものだった。豚の血を混ぜ込んだソーセージ「サングイナッチョ」やトリッパ、豚足、豚の耳などありとあらゆるものを大鍋でぐらぐら煮て、立ち食いで食べさせてくれる屋台の店主や、シャコの殻をはでばりばりと破って新鮮さを誇示する売り子がいた。ウニの売り子はこれまたとげ付きの殻を素手でむんずとつかみ、無造作に袋に投げ入れていた。

そんなワイルドな光景を誇っていたペスケリア市場だが、先日3年ぶりに訪れた時にはそうした過激派は姿を消し、驚いたことにはドイツ人やフランス人ツアーの観光客グループが集団で市場を散策し、活気あふれる様子をビデオ撮影していたり、マグロの解体が始まるとカメラ片手に店の前にどっと押し寄せたりとしていた。その昔は写真を撮っていると「こら!!なにを撮ってるんだ、この※&%$##$%&(以上意味不明)」と包丁片手の茹で肉店主にどなられたりしたものだが、それも昔の話。ペスケリア市場も国際的になったものだと感慨深く思う傍ら、最後の秘境が開発されたような気になり、なんだか寂しさを覚えたのも事実である。

とはいえその豊饒ぶりは変わらない。その日は月曜だったのでやや魚種は少なかったが、それでもマグロ、カジキ、ハタ、ブリといった大物からタイ、タチウオ、イワシ、マトウダイ、サメ、エイといった魚たち、アサリ、カキ、ムール貝はじめありとあらゆる種類の貝、そしてウニ。そうした市場を見て回ればすでにシチリア料理に対するイメージトレーニングは終了したようなもの。そのあとの食事はアンティカ・マリーナへというのが理想的だが市場内に新顔の店も幾つかできていたので、次回はそんな店を試してみるのもいいかもしれない