イタリアで最も有名なシェフ、カルロ・クラッコ

イタリアにおけるTV界の料理ご意見番といえば、長らくジャンフランコ・ヴィッサーニだったが、有料放送SKYの「マスターシェフ」「ヘルズ・キッチン」はじめ、使い古された言葉を使うなら「料理の鉄人」として現在イタリアで最も有名な料理人がこのカルロ・クラッコだ。1965年生まれの51才。料理人としてまさに脂がのる時期でもあり、アンドレア・ベルトンと並ぶマルケジーニの代表格である。

カルロ・クラッコといえばとにもかくにも話題に事欠かない料理人であり、アマトリチャーナのレシピの是非を巡って本場アマトリーチェの市長と論争を繰り広げたのも記憶に新しい。(「アマトリチャーナににんにくは是か非か」)、また「マスターシェフ」の番組中に鳩を料理したことが動物愛護団体の怒りを買い、ミラノ裁判所に動物虐待で告発されたこともあった。(「2つ星シェフ、カルロ・クラッコ、動物愛護団体に訴えられる」)また、イタリアにおけるカルビーともいえるポテトチップ・メーカー、「サン・カルロ」の広告に登場し、ポテトチップをアルタ・ガストロノミア(ハイエンド・ガストロノミー)にどう活かすか?というテーマについて真面目に取り組んでいることも賛否両論である。

ヴィチェンツァ近郊のホテル学校、その名も「ペッレグリーノ・アルトゥージ」で学んだカルロ・クラッコは1986年からグアルティエロ・マルケージの元で働き始める。その後パリのアラン・デュカスで働いたあとフィレンツェのエノテカ・ピンキオーリのシェフに就任、ミシュラン2つ星を獲得する。マルケージがミラノを離れてフランチャコルタに移転する際には再びマルケージとともに働き「アルベレータ」をオープンさせた。ミラノの老舗食料品店「ペック」のストッパーニ家の招聘で「ペック」の目の前にレストランをオープンさせた当初は「クラッコ・ペック」という名だったが2007年にカルロ・クラッコが全て買い取り、現在は「リストランテ・クラッコ」としてミシュラン2つ星を維持している。

カルロ・クラッコの代表作に卵料理がある。これは卵黄を塩と砂糖でマリネして水分を抜き、麺棒で薄く伸ばしてパスタ生地にするという、イタリア料理界における分子料理の先駆けとして衝撃を与えた。クラッコの料理はとかく重くてヘビーとも言われがちだが、ある日のメニューはこんな内容だった。例の卵黄のマリネにキノコ、海藻、メレンゲ、ブランデーソースの前菜。卵黄はソースのようにしてポルチーニやアンズダケとともに食べる。「トマトのリゾット」は水分を飛ばしたトマトとアックア・ディ・ポモドーロ(トマトの種の周囲の水分)で、酸味と香りをつける軽やかな夏向きの料理。そしてセコンドは「ブルーオマールとアーティチョーク、パプリカとスペルト小麦のビール」で、素材を活かすためごくごくシンプルに蒸したブルーオマールとソテーしたアーティチョークを、薫製パプリカ・パウダーとスペルト小麦のビールを煮詰めたソースで食べる。酸味、苦み、薫香といった味の複雑な味の構成要素が料理に奥行きを与えていた。

クラッコの話題といえばもうひとつ、まもなくミラノのガッレリア内に移転することが決定している。2フロア、1118平米の広大なレストランで、ミラノ市に払う賃料は年間なんと109万ユーロ(約1億3000万円)。年中無休でリストランテはもちろんカフェやビストロ、イベントスペースも備えておりミラノの新名所となることが予想されている。

Via Victor Hugo,4 MILANO
Tel02-876774
12:30〜14:00、19:30〜23:00 日、月昼休
ランチ、ディナーともにコース180ユーロ
www.ristorantecracco.it