「サンペレグリノ・ヤングシェフ」藤尾康浩氏インタビュー後編
「実は優勝した時のためにスピーチを用意してたんですが、アクアパンナ賞までいただいたので、その時のスピーチは考えてなかったのでちょっと困りました。まず最初の7人には選ばれると思っていました。でも割とアメリカとアイルランドが強そうな感じがしてたかな。そのあと3人に選ばれたのですが、これも予想していました。多分3人には選ばれるな、と。どちらかというとアクアパンナ賞は意外だったので、メンターが自分を選んでくれてとても嬉しかったです。もちろん優勝も、自分は緊張はあまりしないタイプなんですが、やはり嬉しかったです。

メンターのルカは、かなり早い段階から優勝できなかったらパスポートを破るから日本に帰さないぞ、といわれていました。もちろん冗談半分ですが、実は残りの半分は結構本気なのかな、とも思ってました。ルカもイタリア人として、そしてメンターとしても絶対に勝ちたいという思いが伝わってきたので、自分もそれに応えないと、と思っていました。

勝因をひとつあげるとすれば、一口のインパクトかなと思います。普段はコース料理なのでインパクトというより流れを重視しているので、大会用に考えた作戦です。優勝が決まってから審査員やメンター、ヤングシェフ色々な人に祝福されて声をかけられましたが、いちばん印象に残ったのはマッシモ・ボットゥーラでした。マッシモがいうには、お前がなんで勝てたかというと人の話を聞くからだよ、と。最近は人の話を聞かない若者が多いから、と言ってました。
振り返ってみると、チープな言い方ですが今大会を通じて、自分の中で周りへの感謝がより大きくなった感じがします。いままでは自分の力で、セルフ・オリエンテッドするという思いが強かったのですが、今回は本当に周囲のサポートに助けられました。料理もルカや成澤さん、本当にいろんな人のアイディアが詰まってるので、それがなかったら絶対に勝てなかった。それが一番の財産です。

ルカもかなりプレッシャーがあったようですが、僕はプレッシャーがあるほうがいいんですよ。プレッシャーがないと逆にだらけちゃうん。そういう意味では、日本代表というプレッシャーを与えてくれてありがとう、とサンペレグリノと大会に感謝しています。」
インタビュー・池田匡克

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