グルメ・ピッツァの第一人者、 レナート・ボスコの大著「Mono Pizza」

ヴェローナ近郊にある「サポレ SAPORE」で活躍中のレナート・ボスコは、シモーネ・パドゥアンと並ぶ北部グルメ・ピッツァの先駆者。本書「Mono Pizza モノ・ピッツァ」は、彼の仕事における研究を網羅した、イタリアの最先端ピッツァを俯瞰する大著である。近年のボスコの仕事はピッツァのみにとどまらず、発酵全般、すなわちドルチェ、パネットーネなど多岐にわたり、イタリア国内外で多くのプレゼンテーションを行ってきた。それはまず主要食材である小麦粉の選定に始まるが、単にクオリティを優先するだけではなく、それぞれの小麦が持つ個性を生かせるようにイメージし、同時に最大限引き出すよう務めている。ボスコのピッツァイォーロとしてのキャリアは伝統的な円形ピッツァを焼くサレルノのピッツェリアでの仕事から始まったが、間も無く素材、技術、焼成といった各分野で実験的創造を繰り返すようになり、特に生地と発酵に関する研究と考察に取り組み始めた。分量を変え、素材や食材の組み合わせを変え、時間を計測し、温度や気象条件によって発酵を変えた。そうした生地の研究と同時にボスコは食材の選択にも意欲的に取り組むようになる。DOPやIGP食材であるとか、スローフード協会のプレシディ食品だからと先入観を持って選択するのではなく季節感を重視し、消費者に自然の循環を体験してもらうことを第一義としたが、それはすなわち健康な食生活への提案であり、ボスコが日々の仕事において最重要視していることである。ピッツァ「でも」食べるか、ピッツァは太る、いままでそういう感覚でピッツァを食べてきた人。あるいは食材の知識なく、感覚的にピッツァを焼き、何の疑問もなくピッツァと一緒に食材をフォルノに入れる行為を繰り返してきた人にとってはドラスティックな思考の変換に迫られる、ある意味哲学書に似た一冊。