ジェラート界の権威、ルカ・カヴィエツェル
ジェラート作りを生業とする者、あるいはイタリア料理を志す者でルカ・カヴィエツェルの名を聞いたことがある人はどれほどいるだろうか。ルカ・カヴィエツェルはジェラートの名と品質を世界的に高めた最大の功労者で、イタリア料理界で言えばペッレグリーノ・アルトゥージ、近代ガストロノミー界で言うならばエルベ・ティスに相当する偉大なマエストロである。 ルカ・カヴィエツェルは1923年、カターニアの菓子屋「パスティッチェリア・ズヴィッツェラ」に生まれた。1914年創業の老舗菓子店は2度にわたる世界大戦も乗り越え、今も市内中心部のエトネア通りにあるので、あるいはご存知の方もいるかもしれない。ルカはスイスで学んだ後食品科学の道を志し、スイスの食品メーカーにある研究所で研鑽を積む。イタリアに戻ったのは戦後間もない1946年のこと。当時「パスティッチェリア・ズヴィッツェラ」は菓子、ジェラート、食料品の3店舗を経営しており、72人の従業員が勤めていた。ルカは彼の3人の兄弟と1人の妹とともに、新たにジェラテリア・イグルーをオープンするなど、食品に愛する知識と情熱で、カターニアの戦後復興を強力に推し進めたのである。 まだ20代半ばだったルカは正しい職人とは、文化こそが重要であるという信念を持っていた。それは職業倫理という言葉にも置き換えられるが、店舗を経営しながらも日夜研究を続け、やがてそうした食に関する研究は多くの同業者たちに広く知られることとなる。1970年代初頭には「ジェラート・アルティジャナーレの保護と普及のために委員会」がミラノの観光工科大学内で若手ジェラート職人対象のコースを始めた際、初期講師として活躍した。特に1971年2月8日と19日に行われた講義「ジェラートの品質分析に基づく最良のレシピの創造」で、ルカは史上初めてジェラートにおける食材のバランス配分という技術と概念をイタリアに持ち込んだ。それはエポックメイキングなできごとであり、伝統的なジェラート職人たちの仕事を科学的アプローチでドラスティックに変革した。こうした一連の講義はその後イタリア国内はもちろん、国外でも開かれるようになる。90歳を超えた現在、ルカ・カヴィエツェルはジェラート・アルティジャナーレの世界における権威と目され、彼が書いた一連の書籍はジェラート界の「バイブル」と呼ばれているのだ。

SAPORITAをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。