サルデーニャ!24カリアリ、サ・ドム・サルダ
五,六年前に比べると、カリアリの街中にレストランが増えたなと思う。レストランだけでなく、ちょっとしたモダンな雰囲気のカフェなんかも多い。クラシックなカフェならば、ラルゴ・カルロ・フェリーチェ通りの「カフェ・ズヴィッツェロ」が19世紀末風の雰囲気を今に伝えるなかなか美しい店で、ドルチェやパニーノも美味しい。そのままラルゴ・カルロ・フェリーチェを上ってイエンネ広場周辺に行けば、小さなカフェやワインバーがあちらこちらに潜んでいる。散歩のついでに良さそうなカフェでひと休み、なんていう楽しみがあるのも、カリアリの魅力の一つだ。 というわけで、散歩途中で見つけた気になる店が「サ・ドム・サルダ」だ。サルデーニャの家、という意味である。店の中は天井高く、古い農家のようなイメージなのだろうか、ざっくりとした飾り気のない使い込んだ木の家具や籠やタペストリー、楽器のようなものも飾ってある。でもけして埃っぽくはなく、清潔な感じがする。テーブルには布のクロス、その上に紙のクロス。ぽってりと厚手で真っ白な皿とシンプルなカトラリー。さりげないけれど、きちんと“サルデーニャの家”をイメージして考えられたインテリアだ。前菜はおまかせにしたら、やっぱりこまごまと色んなものが出てくる。サラミ、生ハム、一口大に割ったパーネ・カラサウにのせたペコリーノのクリーム、プリモサーレと呼ばれる未熟なペコリーノチーズ。生ハムはナイフでスライスしたらしく、厚みがあって、噛みしめるとじわりと旨味がにじみ出る。チーズは繊細で優しい味わいだ。 さらに、ナスやトマトを煮込んだカポナータ、きのこのにんにくとイタリアンパセリの炒め煮、ルマキーネと呼ばれる小さなカタツムリのトマト煮、そして、これがとても美味しかったのだが、ポプロリスと呼ばれるサルシッチャ(生ソーセージ)とフェンネルを白ワインで蒸し煮したものもあった。日本に3ヶ月滞在したことがあるというカメリエーレが(イタリアの都市にはこういう人が結構いる)、このポプロリスは、サルシッチャがちゃんと出来ているかどうか確認するための料理なんですよ、と教えてくれた。サルシッチャは、豚挽肉と豚の背脂を塩、胡椒をはじめとするスパイスを混ぜて腸詰めにするのだが、腸に詰める前の状態を少し取り分けて、フェンネルと一緒にさっと煮る。これを食べて「うん、美味しい」となれば上出来、ということななのだろうか。あるいは、塩加減を確認して熟成具合を予測するのだろうか。肝心のところを聞きそびれてしまったが、いずれにしてもポプロリス自体は美味しかった。 前菜の後は、セコンドに面白いものを見つけたので、パスタではなく肉料理を選ぶ。ロバのシチューと馬のグリルである。ロバはトスカーナの田舎でもかつてはよく食べたらしいが、今はほとんど見かけない。馬はプーリアやヴェネトの一部では伝統的に食べるが、サルデーニャもサン・ベネデット市場で馬肉専門店がいくつかあるから、クラシックな食材であるらしい。ロバは臭みも全くなく、教えられない限りわからないだろう。牛肉に似ているようにも思うが、味はあっさり淡白だ。逆に馬は、牛肉をもっと濃厚にして、筋も増量したような感じである。食べ応えのあるステーキに唐辛子やハーブを刻んだオイルやバルサミコ酢がよく馴染んでなかなか旨い。伝統的な農家の味にひと手間かけた料理というのは、今までのカリアリではちょっと味わえなかったように思う。お陰で、カリアリ再訪の楽しみがまた一つ増えてしまった。SAPORITAをもっと見る
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