一般家庭の台所を思わせるトラットリア・マドンニーナ
ミラノで食事する際、予約が取れる取れないは別としていわゆるハイエンドなクリエイティブ系ならばリストアップするのに苦労しないのだが、これが伝統料理となると毎度のことながらリストアップが非常に苦労する。また、店選び同様に苦労するのがメニュー選びで、伝統料理のトラットリアを2件、3件回り、消去法的に一度食べた料理を注文しないようにしてゆくと、そのうち本当に食べる料理がなくなってくる。コ(ス)トレッタ・アッラ・ミラネーゼ、オッソブーコ・アッラ・ミラネーゼ、リゾット・アッラ・ミラネーゼという3大ミラネーゼ料理はもう食べた。次はルスティンネガア、モンデギーリ、ロールキャベツ、ネルベッティ、ブレザオラ・エ・ルーコラのある店を探し、ザバイオーネもパネットーネも食べた。さて、次は?なかなか難しい問題である。 それ以前にそうした伝統料理をきちんと、しかも適正価格で食べさせてくれる店というのはそう多くない。それは現代ミラノ人の需要がそうした濃厚ヘビー料理ではなく、女性ならばインサラータ、男性ならば魚料理、あるいは和食、とローカロリー、ヘルシーな方向へとますます時代は進んでいるからではないかと思える。しかし今日はこてこてのミラノ料理を食べたいと思う時「トラットリア・マドンニーナ Trattoria Madonnina」はきっとそんな飢えた胃袋を満たしてくれるはずだ。 「トラットリア・マドンニーナ 」はファビオ・ロカテッリ Fabio Locatelliとパオロ・ケンピズィオ Paolo Kempisioが経営する、ナヴィリオ地区にある小さな店だ。木金土をのぞいて昼のみ営業なので、難易度は高いが訪れて見る価値はあると思う。メニューは基本的に日替わりの手書き、ある日のメニューはこんな感じだった。Tagliatelle al sugo di brasato Pasta al ragu / o pomodoro Pasta con melanzane Goulasche polenta Ossobuco e polenta Cotoletta con patate Stinco e patate Polpettone e patate Contorno, formaggio, dolce, 以上。明朗にして完結、気持ち良いくらいの潔さである。果たして登場したコトレッタはしっかりと分厚く、バターの香りが心地よい家庭料理風仕上がり。オッソブーコはビアンコではなくトマトで煮込んだあり、ポレンタがたっぷり添えられた迫力満点のピアット・ウニコだった。雰囲気も気楽で地元客中心に賑わい、なによりもコストパフォーマンスがよく気取らない雰囲気が、友人の台所で食べているような気分にさせてくれる。この日メニューにあったのはほとんどがいわゆる黄色くて茶色い料理だが、これがなんとも滋味深くて美味しい。ミラノ伝統料理が食べたいがコトレッタが25ユーロもする高級トラットリアには行きたくない、という方にはおすすめ。ただしメニューは日替わり、少数精鋭なので常に希望する料理に出会えるとは限らないが、それもまた旅の楽しみのひとつかと。
Via Gentilino 6, Milano tel+39 02 8940 9089
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