シチリアのオリーブオイル業界を牽引するメーカー、バルベーラ
イタリアのオリーブオイル生産量の内訳は、プーリア、カラブリア、シチリアの順で多く、この三つの州で全生産量の7割以上を占めていることからも、オリーブオイルは本来、南地中海地方の産物であることがわかる。しかし、南イタリア産は、かつては大量に作られる安価なオリーブオイルというイメージがあり、実際に低品質なものも少なくなかった。昨今は品質重視の生産者が増えており、各地のコンテストで入賞し、しかも何回も続けて賞を取り続けるメーカーもある。ただ、手間と設備に投資するため、こうしたオイルはおしなべて高価で、さらに気候変動の影響や害虫の大量発生といったリスクもあり、品質が安定しにくくなっているのも事実である。 そんな状況でも、安定した品質を提供し続けるメーカーがシチリアにある。トラーパニ県に本社工場を構える「バルベーラ」社だ。創業は1880年、初代ロレンツォ・バルベーラがパレルモ郊外にオリーブと柑橘の農園を立ち上げた。数年後、パレルモの商家フローリオ家(様々な事業を手がけたパレルモ最大の成功者。マルサラの製造者としても有名)と提携して、「シチリア製油会社」を設立。事業を拡大しながら、海外への販売や品評会にも出品し、知名度を上げていった。さまざまな新機軸を打ち出した中でも特筆すべきは、1910年にオリーブオイルの容器として初めてガラス瓶を採用したこと。その後も設備の拡充を続け、4代目のマンフレディ・バルベーラがCEOを務める現在、シチリア各地で10箇所以上の畑を所有し、シチリアの6つのDOP、そしてIGPシチリアのオリーブオイルをはじめ、多種類のEVオリーブオイルを製造。有機栽培への転換も積極的に行なっている。 と、ここまでは資料からもわかる程度の情報。実際に、「バルベーラ」社を訪れてまず驚くのが、その規模の巨大さである。トスカーナやウンブリアの小さなフラントイオ(搾油場)に慣れたものからすると、運ばれてくるオリーブの量、保管するタンクの大きさと数、ボトリング工程のスピードと量は桁違い。それと同時に衛生管理の徹底ぶりもかなりもので、部外者の立ち入りは厳しく制限されている。フラントイオは通常、近隣の農家が持ち込むオリーブの搾油も請け負い、農家やその他第三者が搾油場に立ち入るのはごく普通の光景なのだが、「バルベーラ」社では搾油は請け負っても農家が施設内で立ち会うことはない。食品会社の品質管理としては当然のことだが、小さな搾油場との違いはこんなところにも表れていた。 「バルベーラ」の特徴は商品種類の多さにもある。フラッグシップラインの「ロレンツォ」3種と「カルロ」2種、「グラングルメ」5種、「DOP&IGP」10種、シチリアのほかプーリア、カラブリアのオリーブも使用した「Tuttonatura」11種、シチリアそしてスペインやギリシャのオリーブ単一品種シリーズ「Monovarietali」10種、そのほか、日常使いのオイルやフレーバーオイルなどもある。そのすべてはもちろんEVオリーブオイルであり、大規模メーカーが通常並行して製造するヴァージンオイルや精製オイルを手がけていないのは珍しい。そして、すべてのオイルはマンフレディCEOがテイスティングし、ブレンドを決めているという。「バルベーラの頭は企業、心は職人」と自ら言うように、企業的精神と職人的気質がうまい具合に組み合わさって出来上がっているメーカーなのだ。 農業分野では、中小規模の生産者が参加するコーペラティーヴァと呼ばれる生産者組合が各地にあり、かなり大規模なメーカーとなっている例もある。シチリアでオリーブオイルに特化した生産者組合ができたのは2011年。2001年よりその前身の「オレイフィーチ・シチリアーニ組合」が準備を進め、小さな農家、搾油場、販売業者といったオリーブオイル業界関係者の参加を募り、シチリアのオリーブオイル全体の品質向上とブランド管理を行う「コフィオル」(COFIOL)として誕生した。6つのDOPそれぞれの土地に専用のボトリング工場を有し、50搾油場、200農園、5000の農家が組合員となっている。この組合設立の立役者がマンフレディCEOだ。「シチリア人はそれぞれに哲学を持ち、頑固だから、共同することが難しい。しかし、“シチリアのオリーブオイル”そのものを底上げすることが、個々のメリットになるからと、長い時間をかけて説得したんだ」と言う。 シチリアには約150のオリーブの品種があり、600以上の搾油場が存在する。その中でも「バルベーラ」社は、組合とともにシチリアを代表するだけでなく、シチリアのオリーブオイル業界を束ね、ともに進化を続けようとするメーカーなのである。SAPORITAをもっと見る
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