野生から食材を得る「フォレジング」について女性料理人が語る一冊
Foraging、フォレジング、(最後のgはほとんど発音されないので実際にはフォレジンと聞こえる)この言葉をタイトルにした本書は、フォレジングについての実際のガイドブックというよりも、この一冊を通して、フォレジングとは何か、を知ることができる読み物である。著者ヴァレリア・マルゲリータ・モスカは、自然探究家であり、料理人。「wood*ing wild food lab」という野生の食材研究所を主宰する。 フォレジングとは、可食の野生の植物、生物を採取すること。ただし、食べられればなんでも採取して良いわけではないと著者。フォレジングを行うにあたって、基本的な注意事項を述べている。 1 一つの植物から全ての葉や実などを採取してはいけない。 2 ほんの少量、必要な分だけ採取する。 3 その土地の法律や条例を事前によく調べる。採取が禁止されていることも少なくない。 4 私有地の場合は必ず所有者の許可を得る。 5 汚染地を避ける。工場や道路の近く、有毒物質が含まれる恐れがある土地を避けること。 6 健康な植物のみを選ぶ。 7 大量に繁茂している植物を選ぶ。一本の植物を根ごと採取しない。 8 ハサミを使って植物の上部だけを切り取る、あるいはナイフでキノコの上部のみを切り取る。 9 よくわからないものは触らない。事前の下調べは入念に。 10 他の植物を踏み荒らさない。一箇所に集中して採取せず、なるべく広い範囲で少しずつ採取する。 11 樹皮は、自然に倒木した木からのみ採取する。 12 海草や水草は、工場排水など汚染が懸念される箇所を避け、水に漂っているものではなく、水底に根付いているものを切り取る。 13 自然環境を壊さぬように常に配慮する。 以上を踏まえた上で、葉、実、根、樹皮の内側、地衣、キノコなどについての基本知識、そして、個別の植物、生物(甲殻類、軟体動物など)の特徴とその生息地の解説が展開される。ひとつひとつにイラスト、生息地がマークされた世界地図が示され、また、自然風景の写真も随所に挿入されており、フォレジングを実践せずとも、読み物としてまた写真集としても楽しめる仕掛けになっている。さらに巻末にはフォレジング料理及びフォラジング調味料のレシピが23品ついている。 著者は、「フォレジングは、暮らしの基本として徹底するものではない。自然の中に入っていき、自然とは何か、地球とは何か、守るべきものは何かを考えるためのエクスペリエンスだ」と説く。現代に生きる我々が、立ち止まって未来について考える機会の一つとして、フォレジングという選択肢があるという。 寄せられた序文には「旅先に持って行ってほしい」とあり、少々嵩張るが、確かに旅の供に良さそうな本である。それより何より、旅に出られなくても旅に出ている気持ちになり、自然についてあらためて考える時間を持つことができる一冊だ。   判型:384P オールカラー イタリア語 1300g Giunti Editore刊 2019年4月発売

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