パスティッチェリア・バール・ピノッキオの郷土菓子
「パスティッチェリア・バール・ピノッキオ」は3月末に旧店舗での営業を終了、5月15日から新たな場所に移転して活動を再開した。岩本彬氏は一人でカウンターに立ちイタリア伝統菓子を焼き、エスプレッソを入れるの。岩本氏はマルケ州マチェラータにあるバール・パスティッチェリアで学び、伝統菓子作りを学んだ。そもそも音楽好きだった彼がマルケの地に渡ったのは、サキソフォン工房を訪ねるためだったのだが諸事情あってその目的は果たせず、代わりにといってはなんだが、とあるバール・パスティッチェリアを手伝うようになったのがイタリア菓子との出会いだった。イタリアからの帰国後本格的にカフェの技術とイタリア菓子を学び、マチェラータの師匠とは今風の言葉でいえばテレワーク、昔風にいうならば通信教育でレシピチェックを重ねつつレパートリーを増やし念願の「パスティッチェリア・バール・ピノッキオ」を開いた。そそいて緊急事態宣言がまだ開けない時期、昭和レトロな空気が残る地下街にOPENした新生ピノッキオには、岩本氏自らが言うようにイタリアにありそうでなかなかない駄菓子屋的空気が満ちていた。 この日カウンターに並でんいたのは菓子ケースに入れられた焼き菓子9種類。Ciambelline al vino(Roma)、Baci di dama(Piemonte)、Pasta di mandorle(Sicilia)、Zaletti(Venezia)、Zuccherini Montanari(Tosco – Emiliano)、Buslanèin(Piacenza)、Biscotti di fichi(Toscana)、Papatelli(Abruzzo)、Tozzetti(Umbria)といったラインナップなのだが、これらはひとつなんと100円というリーズナブルプライス。郷土菓子とはいえ決してその敷居は高くなく、エスプレッソを飲みに立ち寄ったついでひとつふたつカウンターに並ぶ菓子をつまむ、そんなイタリアのバールで日々繰り返されるイタリア人の日常を連想させてくれるのだ。チャンベッリーネ・アル・ヴィーノはその固さにローマのトラットリアを思い出し、バチ・ディ・ダーマの素朴さには久しぶりにイタリアを感じた。また、焼き菓子だけでなくイートイン専用のオリジナル・ドルチェもいくつかある。「ピノッキオ」はエスプレッソ・ゼリー、アイス・エスプレッソ、ジェラートという組み合わせ。アッフォガートとも一味違う3つのテクスチャーを組み合わせた夏向きの冷たいドルチェだ。 地方ごとの郷土料理を営むレストランは近年増加の傾向があるが、イタリア菓子に特化した店はまだそれほど多くはない。一口にイタリア菓子といってもイタリアではレストランで出すドルチェから、イジニオ・マッサーリのような「マエストロ」パスティッチィエレが作るアルタ・パスティチェリアまで様々だが「ピノッキオ」のような焼き菓子を専門に扱うパスティッチェリア・バールはありそうでなかなかない。その意味でもイタリア好き、菓子好きの心にひびくスタイルなのではないかと思う。 パスティッチェリア・バール・ピノッキオ Pasticceria Bar Pinocchio 東京都杉並区高井戸西2-10-9 B1 カモンSAPORITAをもっと見る
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