世界に向けた新しい焼酎 The SG SHOCHU by SG Club
渋谷にあるバー「The SG Club」は「Asia’s 50 Best Bars」ランクインなど、2018年創業ながらすでに日本国内はもちろん、海外のバー・クルーザーたちからも評価が高い、日本を代表するトップ・バーだ。創業者経営者(Founder & Proprietor)であるバーテンダー後閑信吾氏はNYや上海など海外で12年間バーテンダーとして活躍。上海に「Speak Low」「Sober Company」という2件のバーを立ち上げたのち、満を持して日本に帰国、「The SG Club」をOPENしたのだ。 海外旅行が自由にならない現在、「The SG Club」では後閑氏が機長となり、カクテルと料理のペアリングで世界を旅するバーチャル・トラベル「SG Airways」を提案している。今年の9月に同ペアリング・ディナーのビジネスコースに参加した際、タイ、フランス、ベルギー、ニューオーリンズなどなど、縦横無尽ありとあらゆる料理とオリジナル・カクテルを組み合わせるそのペアリングに圧倒されたことがある。その際登場したカクテルのベースとなったのが、後閑氏がプロデュースした米、麦、芋からなる3種類のオリジナル焼酎「The SG SHOCHU」だった。去る2020年11月19日「The SG Club」であらためて少人数限定の「The SG SHOCHU」のプレゼンテーションが行われた。 実はこの「The SG SHOCHU」は、今年3月に佐賀で開催予定だった「Asia 50 Best」にあわせ、焼酎の故郷九州で大々的に発表される予定があった。JR九州の誇る豪華寝台列車「ななつ星」が「Asia 50 Best」プレイベントとして特別運行。バー車両では後閑氏をゲストバーテンダーに迎えてのカクテルタイムが予定されており、実はわたしも乗車する予定だったのだ。ところが新型コロナウイルスの拡大に伴い「ななつ星」の特別運行は二度に渡る延期の末、無期限延期という事実上の中止。なのでこの秋、そのリベンジに、というわけでもないがこの「The SG SHOCHU」を存分に味わう機会に恵まれたわけだ。 この日の発表会では米、麦、芋それぞれを使ったカクテルとフードペアリングが3種類、「SG Airways」のメニューからセレクトされ、関係者に振舞われた。「今まで焼酎は、食中酒としてとらえられていたので外国のバーテンダーには全く知られていない存在だったが、ジンやウォッカなどと同様、非常にカクテル向きのスピリッツ。しかも世界では稀有なシングル・ディスティルド(一回蒸留)なので、素材の個性が反映されている。この「The SG SHOCHU」を近い将来世界中のバーテンダーがごくごく普通に使うようになる、そんな構想を描いています」と後閑氏。確かにこれまでの国内向けの焼酎デザインとは一線を画す、バックバーに並んでいても見栄えのするデザインは日本よりも世界を意識したものだ。「シングル・ディスティルド」と明記されているのも「シングル・モルト」あるいは「シングル・ヴィニャード(単一畑)」「モノ・クルティヴァル(単一品種)」と並んでより価値を高めてくれるのではないだろうか。 「The SG SHOCHU」の3種類の焼酎はそれぞれKOMEが白岳の高橋酒造、MUGIはいいちこの三和酒類、IMOが薩摩酒造とどれも各カテゴリーのトップメーカーとのコラボによる。まず最初に登場したのが「レッドアイ」。トム・クルーズの映画「カクテル」で一躍有名になり、ビールをトマトジュースで割ったところに生卵を落としてほと行きに飲み干し「こいつがバーテンダーの朝食だ」というシーンが有名になった。今回はベースにKOMEを使い、トマトジュースではなくトマトのタネの周囲にある水分を濾した透明なトマト・ウォーターを使用。さらにうずらの卵をトッピングした透明なレッドアイ。トマトウォーターの軽やかな酸味と舌触りの良いKOMEは好相性。9月には「KOME ソーテルヌ トマト カカオ」を飲んだが、上品な甘さと酸味のコントラストがとても印象的な一杯を飲んだ。 ついで登場したのが「MUGI シェリー オレンジ 鰹出汁」のカクテル。これは後閑氏がシェリー蔵を回った際現地の公園でなんども練習して覚え(地元の新聞記事にもなったという!)道具も現地で購入したヴェネンィアドールを披露してくれたのでこれは動画でご覧いただきたい。急激に酸化させることでよりまろやかになるという効果もあるが、なによりそのプレゼンテーョンは忘れらない一杯となるはず。鰹出汁はどことなくハモン・セラーノの発酵感を思い出させ、シェリーとオレンジはまどうことなきスペインの香り。これにあわせるフィンガーフードがまた秀逸。ハモンイベリコを乗せた磯辺焼きで納豆バターが餅と生ハムをつなぐ。口中にひろがるさまざまな発酵食品の複雑な香り、しかしそうしたエレメントの根底に流れるのは、マドリッドの酒場にただよう、シェリーとハモン・セラーノのあの懐かしい独特の香りだ。
そして前回「SG Airways」の際はデザートとして登場した「IMO ホワイトチョコレート とうもろこし」。ペアリングは冷たいベルギービールのシャーベットとグレープフルーツ、ジンジャークッキーに似たスペキュロス。テーマカラーは白、「KOME」もそうだがミニマルなモノトーンのカクテルは後閑氏の世界観を表現しているように思える。デザートカクテル的な「IMO」を一口味わい、冷たいシャーベットを口に運ぶとベルギービールの香りと豊かな酸味、そして心地よい甘みが広がる。特に「IMO」はその個性がより強く、甘みを感じるために食後酒的使い方がよく似合う。 今回登場した「The SG SHOCHU」はすでに一般向けにも市販されており「The SG Club」の公式サイトでも販売しているので興味ある方は試してみてほしい。日本酒を使ったカクテルはすでに海外でも認知されているし、以前フィレンツェでも大吟醸、吟醸、純米、それぞれの個性にあわせたカクテルを「ラスプーチン Rasputin」のダニエレ・カンチェッラーラ Daniele Cancellaraが提案してくれたことがあった。しかし焼酎はというと、後閑氏もいうとおり地名度ほぼゼロのドメステッィク食中酒という認識だったはずだ。しかし近い将来世界のバーカウンターに「The SG SHOCHU」が並び、ジンやラム、テキーラやメスカルといった世界のスピリッツと肩を並べてオンメニューする日もそう遠くはないのかもしれない。あと必要なのはそうした焼酎を使い、誰もがどこかで聞いたことある、と言ってもらえるようなスタンダードとなりうるカクテル作りだろう。「KOME」「MUGI」「IMO」を使い、世界初のスタンダード焼酎カクテルを広められるのは後閑氏以外にありえないのではないだろうか。期待を込めつつ「The SG SHOCHU」がイタリアのバーでも飲めるようになる日がそう遠くないことを夢想する。 SG CLUB エスジークラブ TEL:03-6427-0204 住所/東京都渋谷区神南1-7-8 営業時間/日〜木17:00〜1:00(金、土〜2:00)無休  

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