2021年アジア50ベストに見るイタリア料理の到達点
昨日、2021年度版「アジア50ベスト・レストラン」が発表された。これは先日すでに発表されていた50〜100位ランキングに次ぐものだが日本のイタリア料理店をめぐる動きは、いやさらにいうならアジアのイタリア料理店に関しても喜ばしいニュースは少なかった。50位以下に目を通して見るとまず注目に値するのが64位にランクインした和歌山の「ヴィッラ・アイーダ Villa Aida」。自ら畑を育て野菜を作る小林寛司シェフの料理はいまやイタリア料理の範疇を超えて東京から足を伸ばして訪れたい地方レストランの筆頭的存在だが、海外からの高評価は実に嬉しいニュースだ。そして91位にランクインしたのが京都の「チェンチ Cenci」。一昨年東京で行われたディチェコ・セミナーでも坂本健シェフの料理は高く評価されていたが今回ついにランクイン。現在京都で行きたいイタリア料理店のひとつであることは間違いない。一方54位と大幅に順位を下げたのが「イル・リストランテ ルカ・ファンティン Il Ristorante Luca Fantin」。昨年は17位にランクインし、ウンベルト・ボンバーナ Umberto Bombanaを抜いてアジア最高位のイタリア料理店兼イタリア人シェフとなったが、2020年4月以降の休業期間が響いたのか。来年度の捲土重来に期待したい。 50位以下で他に目立ったニュースといえば82位の上海「ダ・ヴィットリオ Da Vittorio」。いうまでもなくベルガモ本店のミシュラン3つ星「ダ・ヴィットリオ」の上海店で、2019年にOPENすると同年のミシュランで早くも1つ星を獲得。イノヴェイティヴというよりグランメゾン的なスタイルは、海外における高級イタリア料理店のあるべき姿なのではないだろうか。 50位内のランキングではイタリア料理店に関する新しい動きは残念ながら皆無である。最上位はランキングの常連ウンベルト・ボンバーナの香港「オット・エ・メッツォ・ボンバーナ 8 1/2 Bombana」が33位。ルカ・ファンティンを抜き返して再びアジア最上位のイタリア人シェフに返り咲いた。「世界一白トリュフを売るシェフ」という紹介がそのスタイルを如実に表しているが、イタリア料理店としての50位内はボンバーナのみ。毎年書いていることだが、アジアのファイン・ダイニング界におけるイタリア料理の評価はなんとも寂しい限りだ。 希望的観測で来年以降に目を向けて見ると、年内にはマッシモ・ボットゥーラ Massimo Botturaの「グッチ・オステリア Gucci Osteria」が銀座にOPEN予定。さらにすでに東京駅八重洲口駅までは工事が始まっているが「ホテル・ブルガリ」の開業もカウントダウン状態。こちらはニコ・ロミート Niko Romitoがエグゼクティヴ・シェフとなるのでは、との噂が広まっている。カルミネ・アマランテがシェフに就任した「リストランテ アルマーニ Ristorante Armani」も来年はランキング候補だろう。日本人シェフならば能田耕太郎シェフの「ファロ Faro」は2021年版ミシュランで1つ星に輝いたが、次の目標は「アジア50ベスト」。ランクインはもちろんのこと、ヴィーガン・イタリアンで注目シェフ賞に相当するOne to Watchの受賞を期待したい。そして願わくば加藤みね子さんにはアジア最優秀パティシエ賞を受賞して欲しい、と願う。SAPORITAをもっと見る
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