パレルモの青空市場バッラロ改修 屋根付きに
シチリアの州都パレルモの胃袋を支えるのは、ヴッチリア、バッラロ、カポ、三つの市場。廃墟と見紛うような建物の合間を縫う路地に店が並び、見事なバランスで巨大なカリフラワーやアーティチョークが積み上げられていたり、激しいシチリア訛りで呼び込むダミ声がこだましていたり、カオスのひとことに尽きる、それがまぎれもないパレルモらしさなのだが、治安は良くないし、最近は郊外のスーパーにお客が流れているらしく、衰退の一途をたどっている。特にヴッチリアは店もほとんどなくなり、パンデミックで観光客も途絶えてからは半ば遺跡になりかけていると言ってもいい。
そんな現状に歯止めをかけようと、2016年にバッラロ市場組合が立ち上がった。パレルモの公営住宅機構、パレルモ大学の建築工学部、SOSバッラロ市民団体の協力を得て、EUの公共建築補助金制度を利用することに成功。公営住宅とカルミネ広場に屋根付き市場を新設する計画がスタートした。

カルーバの飴製造者で、バッラロ市場組合の組合長であるジャコモ・テーラノーヴァが語る。「ここに生まれ育った私は、20世紀初頭にカルミネ広場に建てられ、1970年代に取り壊された屋内市場の話を常に聞かされてきた。5年前、それを再現しようという話が出てきた時、誰もそれを信じようとはしなかった。ここでは“信じない”ことが当たり前なんだ。街には大きなスーパーが次々にできて、市場の活気はどんどん失われ、我々は行政からもパレルモ住民からも見放されたような気持ちを味わってきた。でも今は、かつての活気を取り戻し、信頼を取り戻し、再び蘇ったことに喜びを噛み締めている。組合に参加する人も増えてきたし、この市場の魅力を伝えるためのアクションについて色々考えているところだ」。
2020年終わりから工事が始まり、完成も間近である。カラフルなパネルが貼られた屋根付き市場の周りには、噴水やベンチも整備される。この市場の中には、カルミネ広場で商売をしていた業者が入り、秋までには33の店舗が揃い、そのうち魚屋が9軒を占める予定だ。店の営業がない時は、イベント会場としての活用も計画されている。パレルモ旧市街の空洞化を食い止める象徴的な場所として、バッラロ再生は始まったばかりだ。
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