パルミジャーノ・レッジャーノとビール・ペアリングの可能性
イタリアにおけるチーズの王様として名高いパルミジャーノ・レッジャーノとビールのペアリングの可能性を探るという興味深いセミナーが去る2022年6月2日(木)に開催された。会場となったのは六本木ミッドタウンにあるザ・リッツ・カールトン東京、一方講師はジャパンビアソムリエ協会の山上昌弘会長。パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会は毎回意欲的やイベントや講習会を行なっているが、ワインではなくビールとの相性を考察する「パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング」にはフード&ベバレッジ関係のジャーナリスト約30名が集まった。
パルミジャーノ・レッジャーノは約1000年にも及ぶ長い歴史を誇り、北イタリアの限られた地域のみで添加物を一切使わずに職人の手により作られているセミハードタイプノチーズ。通常約2年の熟成期間を経て育まれる深い旨味と独特な食感が特長で、厳しい審査に合格したものだけがパルミジャーノ・レッジャーノと名乗ることができるのだ。 この日のペアリングには合計5種のペアリングが登場したのだが、まず最初は「パルミジャーノ・レッジャーノの皮ポップコーン風とエルディンガー・アルコールフリー(独)」は一口大にカットしたパルミジャーノ・レッジャーノの皮を600Wの電子レンジで1分加熱し、ポップコーンのようにしたスナックと、すっきりとしたドイツのノンアルコールビール、「エルディンガー・アルコールフリー」。パルミジャーノ・レッジャーノの皮を捨てるところなく使うのはクチーナ・ポーヴェラ、あるいはアンティ・スプレーコの精神に相通じるところがある。一方エルディンガー・アルコールフリーはスッキリしたタイプのノンアルコールビール。パルミジャーノ・レッジャーノの皮ポップコーン風に黒胡椒を使えばピルスナーやへレスにもよくあうと山上会長。 2番目が「12ケ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノとバラデン イザック(伊)」最低熟成期間である 12 か月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノは、まだフレッシュなミルキー感が特徴。ヨーグルト、ハーブ、茹で野菜の香りもして弾力もある。一方「バラデン イザック」はご存知イタリアを代表するクラフトビールの雄。ベルジャンホワイトタイプで洋梨、グレープフルーツ、白い花、特にエーデルフラワー、最後にコリアンダー、軽い苦味もある。またパルミジャーノ・レッジャーノとキュウリをあわせたものも登場したが、これはズッキーニの応用と考えれば好相性なのも納得。 3番目の合わせは「24ケ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノ&枝豆、山椒とイセカドヤビール ネコニヒキ(三重)」24ケ月熟成はパルミジャーノ・レッジャーノらしさが最も感じられ、アミノ酸の結晶である白い斑点も見受けられる。パイナップル、栗、柑橘の風味が豊かで、枝豆、山椒、オリーブオイルとあわせた食べ方は、生のそら豆と一緒に食べるトスカーナの春を思い出させてくれた。一方ニコニヒキは濁りのあるヘイジーIPAスタイル。 4番目の組み合わせは「36ケ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノとアインガー・セレブレーター(独)」ほのかな絡みや鼻腔に抜ける香りが素晴らしい36ケ月熟成には黒パンを思わせる味わいのドッペルボックを。断食期間に液体のパンとして修道士らに好まれたという、どっしりとした味わいのビールだ。 最後のデザートは12 か月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノに和三盆を塗した「パサンボン」とビアカクテル「抹茶ビア」これは遊び心あふれる組み合わせだが、パルミジャーノ・レッジャーノと長期熟成の甘いバルサミコの組み合わせを連想させる。また、少量の水で溶いた抹茶1に対しピルスナー7の抹茶ビアもすっきりした後口で非常に印象に残った。いずれも先入観にとらわれない自由なスタイルでありつつもイタリア料理の王道的組み合わせ=黄金律に敬意を払っているかのような実に奥深いペアリングだった。今回の一連のペアリングからは自宅で自由に応用自在な組み合わせやアレンジも可能なので、ぜひ自宅でパルミジャーノ・レッジャーノをアレンジしたアペリティーヴォ・タイムを楽しんでみてはいかがか。

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