イタリアのチーズを識る「イタリアチーズ料理講習会」開催
去る2022年6月13日(月)イタリア大使館貿易促進部によるイタリア産チーズプロモーション・イベント「イタリアチーズ料理講習会」が開催された。会場となったのは服部栄養専門学校で講師には「リストランテ濱﨑」の濱﨑龍一シェフが登壇。事前登録者で満員となった会場はこの日しばしイタリアの空気と香りに包まれ、実に華やかなイベントとなったのだ。オープニングに先立ち、主催者であるイタリア大使館貿易促進部、エリカ・ディジョヴァンカルロ部長は今回のイベントの趣旨についてこのように語ってくれた。 「 様々な意味においてこのイベントは非常に重要です。まず、2年ぶりに皆さんとご一緒できるオンラインではなくリアルなイベントだということ。この2年間はもちろん日本に限らず世界中が非常に困難な状況にあったわけですから、とても感慨深いものがあります。もうひとつ、日本においてイタリアのチーズへの関心が再び高まっていることにも注目して下さい。2020年はコロナの影響を受け金額ベースでイタリアからのチーズの輸出量は減少しましたが、2021年には回復の兆しを見せ、2022年の第一四半期の日本への輸出は数量、金額ともに伸長傾向にあります。」 つまり今回のイタリア産チーズプロモーション・イベントは名実ともにコロナ禍を抜け出し、メイド・イン・イタリーのチーズの良さに再びスポットライトを当てる非常に貴重な機会だということだ。 セミナーに登壇した濱﨑龍一シェフが披露してくれたのは全部で6種類のチーズを使った3つのオリジナル・レシピ。会場を埋め尽くした来場者には試食用小ポーションの料理も配られ、一様にイタリアのチーズの多様性と応用性の高さに感嘆したようだ。 最初の料理は「プロヴォローネのインパナータ〜茄子と青トマトとともに〜」。プロヴォローネとはイタリア北部パダーナ渓谷エリアの典型的なチーズで、今回は熟成期間の短いドルチェタイプを使用。スライスしたプロヴォローネに強力粉、パン粉、卵をつけてフリット、茄子はあらかじめグリルしてからアンチョビとガーリックで味付けしたオイルで一晩マリネ。青トマトのスプーマとともに盛り付ける。子供も好きそうなチーズフライに青トマトのフレッシュな酸味とナスの香ばしさでイタリアンテイストをプラス。白ワインやビールに合う万能な前菜だ。 「ペコリーノ・トスカーノDOPとトウモロコシのトルテッリ」はマスカルポーネ、ペコリーノ・トスカーノDOPスタジオナートにトウモロコシのピューレを加えリピエーノにし、パスタ生地はトルテッリ型に抜く。茹でた後仕上げにセージバターで香りづけし、ペコリーノ・トスカーノDOPスタジオナートをふりかけたパスタ料理。手打ちパスタならではの滑らかさに加え、トウモロコシの甘みと2種類のチーズの塩味と旨味、仕上げのペコリーノ・トスカーノDOPスタジオナートの香りが実に心地よいハーモニー。「料理もチーズもトスカーナが好き」という濱﨑シェフは、羊乳から作る代表的チーズ、ペコリーノもトスカーナDOPを愛用。生クリームを加えたリッチでコクのあるフレッシュチーズ、マスカルポーネとミックスすることでより奥深い美味しさを引き出すことに成功した。 最後の料理は「チーズのリゾット サフランとハチミツ、ヘーゼルナッツの香り」。3種類使用したチーズはそれぞれ北イタリア産。タレッジョ渓谷発祥のウォッシュタイプであるタレッジョDOP、世界三大ブルーチーズの一つと呼ばれるゴルゴンゾーラDOPで今回は熟成の若いドルチェタイプ、そしてイタリアチーズの王様と呼ばれるハードタイプのパルミジャーノ・レッジャーノDOP。まずは玉ねぎ、次いでリゾット用のカルナローリ米もバターで炒め、プロセッコ、さらにブロードを徐々に足しながら炊き上げる。仕上げにタレッジョDOP、ゴルゴンゾーラDOPドルチェ、最後にパルミジャーノ・レッジャーノDOPを加え、EXVオリーブオイルでマンテカート。盛り付けはローストしたヘーゼルナッツ、ブイヨンに漬け込んだサフランのソース、パセリオイルで完成。北イタリアのアイコン的料理であるリゾットは、シンプルながらも3種類のチーズの香りが重層的で非常に奥行きがある味わい深い一品。ミラノ的エッセンスであるサフランとピエモンテを代表する食材であるヘーゼルナッツでさらにイタリア的テイストをプラス。 3品いずれもチーズの特性を生かした素晴らしい料理だったが、特にリゾットはいつまでも記憶に長く残りそうな味だった。 この日は日本のイタリア料理界を代表するシェフによる、イタリア料理での展開だったが、イタリアのチーズの可能性はイタリア料理にとどまらない。最後にもう一度エリカ・ディジョヴァンカルロ部長のコメントを引用しておきたい。 「イタリアの食材は限定的な使い方にとどまらず、フレキシブルで自由な使い方が可能だと思いますが、イタリアの食材本来がもつ性質を正しく使いこなすことも必要です。例えば以前外国で冷やした赤ワインを出されたことがありましたが、ワインでもチーズでも食材の持ち味を生かす温度で提供することは非常に大切です。また、ゴルゴンゾーラは知っていてもタレッジョやペコリーノを知らない方も多いかもしれません。イタリアにはチーズだけをとってもこうした多様性があることをより多くの日本の方々に知っていただきたいので、わたしたちは今回のようなイベントを企画しています。単に製品のプロモーションをするだけではなく食べ方、料理法を通じて食材が持つ本来の味を最大限に味わっていただきたいと思っています。」   おいしくたのしいイタリアチーズ https://www.ice-tokyo.or.jp/italia-cheese      

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