アルマーニ/リストランテが提唱するサステイナブルメニュー
ガンベロ・ロッソが選ぶシェフ・オブ・ザ・イヤー2022に輝いたカルミネ・アマランテ率いる「アルマーニ / リストランテ」が新メニュー「サステイナビリティ」をスタートした。これは昨年フードロスバンクの協力のもと、フードロス食材を中心に組み立てたコースメニュー「ロスフードメニュー」を前進、深化させたもの。「ロスフードメニュー」をきっかけに日本の農業や食材、観光問題などに興味を持つようになったというカルミネは、料理人の使命として食材への取り組み方について再考。そして今回再びフードロスバンクと協力して新たなるメニュー「サステイナビリティ」を作り上げた。そのテーマは「日本米」「地方」「フードロス食材」という3つのエレメントへのサポートだ。 まず「米」についてはイタリア産のリゾット米ではなく日本米を使用。需要低下により廃業に追い込まれることもある米農家のため、そしてフードマイレージ的にも空輸でなく日本国内の米を使用することは大きな意味がある。 「地方」については今回のメニューには北陸産にスポットをあて、メニュー内のメイン食材は全て北陸産のものを使用している。今後の「サステイナビリティ」メニューでは季節毎に異なるエリアをピックアップし、日本各地の食材を使ったイタリア料理を提案する予定だ。 そして「フードロス食材」については不揃い、規格外などで出荷されない食材を料理に使用し、さらにその食材の全てを無駄にしないよう、普段は廃棄する野菜の切れ端などもブロードに使用するなど、徹底的にフードロス・ゼロに取り組んでいる。 注目の第一弾メニューはこんな内容だ。まずアミューズが「高農園のサラダ」でその日のオススメ野菜を20種類ほどサラダに使用し、サルサヴェルデのほろ苦く酸味あるドレッシングであえてある。また、箸を添えてあるのも食材のひとつひとつの触感や形状を感じて欲しいとの思いからだ。 「スモークハマチ」は福井県が誇る魚であるハマチをスモーク、スライスした二十日大根、ポロネギのフリットで香ばしく仕上げ、ライムの香りが爽やかなセビーチェ・ソースでまとめたもの。 「スナップえんどうのリゾット」はリゾットにあう日本米を厳選して配合した「れすきゅう米」を使用し、野菜の切れ端からとったブロードで炊き、グリーンピースのピューレとパルミジャーノ・レッジャーノでマンテカーレしてある。そのイメージは春のイタリアを代表する家庭料理「パスタ・エ・ピゼッリ」だ。 メインの魚はハマチと同じく福井産のサワラ。カツオのたたきの手法でわら焼きして香ばしく仕上げ、アスパラガスのスライスにアスパラガスのブロードにクレソン、エシャロット、ポロネギを加えて作ったソース。見目も鮮やかだがその豊かな香りも特筆ものだ。ドルチェは2種類で、まずは福井産とみつ金時を使用したスティックタイプのアイスキャンディ。子供の頃の記憶を呼び覚ませてくれるようなユニークな姿だが、ベルガモットのシャーベットもしのばせてある大人の味。もうひとつが石川県産のいちご紅ほっぺをふんだんに使ったデザートで、いちごのピューレのシャーベットに黒龍酒造の酒粕で作ったジェラートを加え、周囲にイチゴをふんだんに飾ってある。 食材を無駄にしないというコンセプトもそうだが、なによりも評価したいのがカルミネの代表的料理である「カンデラ・ジェノヴェーゼ」あるいは「トルテッリ」といった手打ちパスタや、出身地ナポリの味をスフレに再構築したドルチェ「パスティエラ・ナポレターナ」などの過去の名作をあえてメニューから外したことだろう。つまり「サステナビリティ」メニューは徹頭徹尾新メニューで構成してあるのだ。カルミネが挑む新しい料理の世界観を体験せずに日本のイタリア料理の最新形は語れない。アルマーニ / リストランテ 東京都中央区銀座5-5-4 アルマーニ / 銀座タワー10&11階 Tel03-6247-7005 11:30〜15:00(LO14:00)、18:00〜23:00(LO20:00)月休 「サステイナビリティ」全6皿12,000円(税・サ別)
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