FOODEX2025、イタリア食品最新レポート
毎年3月に開催される食品及び飲料の展示会FOODEX JAPAN。今年で50回目を迎えるアジア最大級の同展示会において、海外パビリオンとしては最大規模のイタリア館を訪れた。オリーブオイルやパスタ、チーズ、オイル漬け野菜やソースといった加工品、菓子、コーヒー、ワインやリキュールその他アルコール類まで幅広く、出展社数は190を数える。イタリア国内でのアフリカ豚熱消滅まで生ハムなどの肉加工品がないのは寂しいが(数は少ないがモルタデッラやプロシュート・コットは日本に輸入が認められているメーカーもあるので、もしそれらが出展していたらかなりの人だかりとなっただろう)、訪問する価値は十分にあるパビリオンである。インポーターがまだついていない出展社の中にはスタートアップ企業もあり、伝統だけでなく今のイタリアのムーブメントも感じられるのも魅力だ。 たとえば、シチリアのマザーラ・デル・ヴァッロからやってきたLalaina社が紹介するのは、同地特産のエビ、ガンベロ・ロッソの“捨てられる”部分を利用した「コラトゥーラ・ディ・ガンベロ」。一般的にコラトゥーラは、塩漬けにしたイワシから滲み出る魚醤というイメージがあるが、エビのコラトゥーラは頭と殻から抽出したエキス。身をタルタルとして生で提供することが常で、それ以外は廃棄されてしまうガンベロ・ロッソがもったいないと試行錯誤の末生まれた新製品である。イワシのコラトゥーラとは違い、塩を使わず、ビスクのような煮詰めることもせず(瓶詰め時に行う加熱殺菌のみ)、ガンベロ・ロッソの旨みをナチュラルに引き出したソースで、パスタに絡めたり、リゾットのマンテカーレに加えたり、ピッツァやピンサ、クロスティーニの仕上げトッピングにするなど、汎用性が高い。主にレストランで使われることを想定しているが、ボトルのラベルデザインも美しく、一般小売も好調だという。 昨年末に道路交通法が改定され、飲酒運転への罰則が厳しくなったイタリアでは、ワインなどアルコールの売り上げが鈍化しているという声が聞こえるようになった。それ以前からもノンアルコールのワインやモクテルへの注目度が高まっており、マーケットの変化に対応する企業が増えている。トリノで1930年よりリキュール製造を行うVincenzi社は、伝統的なチョコレートドリンクのビチェリンをモデルにしたチョコレート・クリーム・リキュール「ビチェリン」を筆頭に、各種リキュール、ヴェルモット、ジンなどを展開しているが、ノンアルコールのシロップも70種類以上揃えている。モクテルのベースはもちろん、炭酸水で割るだけで手軽にドリンクができるので、飲食店の食前やカフェでサービスされることも多い。素材のイラストが描かれたエチケットはレトロな雰囲気のボトルとも相まって老舗らしさを感じさせ、控えめながらも存在感がある。 ハム・サラミ製品が不在の今、重要な役割を担うのはやはりチーズだろう。イタリア館を取りまとめるイタリア大使館貿易促進部が先導するチーズ特設コーナーや、パルミジャーノ・レッジャーノ・コンソーシアムのブースのほか、個別のメーカーのブースも数はさほどではないが、人目を惹くユニークなチーズを見かけることが多かった。印象に残ったのは、Casa Arrigoni社。北イタリアの山岳地帯に点在するチーズメーカーの一つで、タレッジョ渓谷で昔から続くトランスマンツァ(家畜の季節移動)の伝統に則った乳牛その他のチーズを作っている。とりわけ、アルプスの山裾に自生するバラエティに富んだ野草を食べた牛の乳を使ったオリジナルのチーズ、ロッコロ・ヴァルタレッジョは、コクのある旨みと優しいミルキーな香りで、バランスの良さが際立つ。ナチュラルの他、ローズマリーで覆って熟成させたロッコリーノ・デル・メディテラネオ、モデナ・バルサミコIGPで熟成させたロッコリーノ・ネーロ・インペリアーレなどもあり、いずれも本来の味わいを保ちながらもインパクトのある香りでまた違った魅力を感じさせるチーズだ。 イタリア館以外にもイタリアの食品をチェックできるブースがあることも忘れてはならない。カンパーニア州やラツィオ州、アブルッツォ州などが独自のブースを構え、小さな生産者がそこに出展している。日本にいながらにしてニッチな逸品やトレンドをキャッチする貴重な機会であることを再認識した。SAPORITAをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。