シチリア美食の王国へ01 快適なシチリア食の旅を始めるために(無料公開)

パレルモ事始め—快適なシチリア食の旅を始めるために

シチリアへの旅はやっぱりパレルモから始めるべきだろう。私自身、1995年に初めてこの島を訪れて通算で9回、今回で10回目を数えて、その経験から思うに、やっぱり“とっかかり”はパレルモだなと思うのだ。

歴史的にもパレルモは文化のクロスするところとして、東方から西方からいろんな影響を受けてきた。アラブ、ノルマン、スペイン。大きく分ければこの三つの民族に支配された時代がもっとも色濃く街の姿に残っている。パレルモひいてはシチリアがそういった支配者たちを喜んで迎え入れたかどうかは別として、そういう“よそ”からの波に慣れてきたという印象を受けるのがパレルモだ。何度訪れても感じるのが、独特の懐の深さ、諦めにも似た寛容。そして、したたかに自分の世界を生きているという秘めたパワー。

パレルモは空港から高速に乗ってだいたい三十分で着く。初めて車で入ってくると、いったいどこから街の始まりなんだ?と思う。イタリアの都市はどこでもそうだが、街に近づくとそれまでの高速道路が街をぐるりと回る環状線になる。標識が必ずしも親切とはいえないイタリアでは、高速の終わりと街の始まりがわかりにくい。流れに沿って走っていても、今自分がどの辺りにいるのかさっぱりわからない、というのがごく当然のように起こる。

だから、パレルモへ向かうときには、あらかじめ、自分がどこに行きたいのか(レストランなのか、ホテルなのか)はっきり決めて、目標となる近隣のもの(港、駅、広場、劇場)を見極めておくことが肝心。街の中へ侵入し、途中で目的地のホテルかレストランの名前を叫んで地元民に助けを乞う。イタリア語ができなくたって、目的地の名前や通り名をひとこと言えば、イタリア人は慣れたもので「ああ、あそこはこう行くんだよ」と教えてくれる。

パレルモに限らず、都市に到着するのはなるべく明るいうちに、が基本だ。シチリアは近年、ダーティなイメージを払拭して観光地としての宣伝にやっきだが、治安の面ではまだまだ不安な部分も多い。不愉快な出来事に出会わないためにも、基本的な防犯知識を働かせたい。要するに、暗い時間帯に暗いところへ行かない、たとえ運転中でも車のなかに荷物を見えるように置かない、後部座席に誰もいないときは荷物をそこに置かない、などの配慮を怠らないように。