OADランキングには、なぜフィレンツェのトラットリアが多いのか?
OAD(Opinionated About Dining)とは2004年にスティーヴ・プロトニッキが創設した団体で、世界の料理レビュアー6000人の評価を統合し、あらためて世界レストランキングを決定するというシステムだ。2019年度最新版ではまず先日、各カテゴリーの中で日本のレストランTOP100がいち早く発表され、1位に「鮨さいとう」が選ばれた。次に発表されたのがTop 100+ European Heritage Restaurants 2019で、これは「ヨーロッパの遺産レストラン」とでも訳せばよいのだろうか。つまり伝統料理を重んじる老舗レストランが選ばれているのだが、そのランキングを見て驚いた。 イタリアからは6位のロショーリ Roscioli(ROMA)、12位のイル・チェントロ Il Centro (Priocca)、13位のソスタンツァSostanza(Firenze)を筆頭に、SAPORITAおよび「フィレンツェ美食散歩」「ローマ美食散歩」などなどの読者の方々にはおなじみのトラットリアがずらり。実にTOP100のうち18件がランクインしているのだがそれはこんな感じだ。  
Rank Name Cuisine Location
6 Roscioli Trattoria Rome, Italy
12 Ristorante Il Centro Piemontese Priocca, Italy
13 Trattoria Sostanza Trattoria Florence, Italy
15 Antica Corte Pallavicina Parmenese Polesine Parmense, Italy
19 Da Ruggero Trattoria Florence, Italy
24 La Ciau del Tornavento Piemontese Treiso, Italy
26 Armando al Pantheon Trattoria Rome, Italy
28 Hosteria Giusti Trattoria Modena, Italy
30 Buca Lapi Trattoria Florence, Italy
37 Antica Corona Reale-da Renzo Piemontese Cervere, Italy
44 Alle Testiere Trattoria Venice, Italy
56 Cammillo Trattoria Florence, Italy
58 Il Latini Trattoria Florence, Italy
62 Trattoria Bologna Trattoria Turin, Italy
66 Da Vittorio a San Remo Ligurian Sanremo, Italy
73 Antiche Carampane Trattoria Venice, Italy
77 Latteria Trattoria Milan, Italy
86 Cibrèo Trattoria Florence, Italy

6位ロショーリ Roscioli(ROMA)

13位ソスタンツァ Sostanza(FIRENZE)

19位ダ・ルッジェーロ Da Ruggero(FIRENZE)

ちなみにフィレンツェからは13位のソスタンツァSostanza、19位のダ・ルッジェーロ Da Ruggero、30位のブカ・ラープ Buca Lapi、56位のカッミッロ Cammillo、58位のイル・ラティーニ Il Latini、86位のチブレオ Cibreoと実に6件がランクイン。これはイタリアでもフィレンツェが最多である。TripAdvisorなどのランキングでは大抵市内中心部でアクセスの便が良い、つまり通りがかりの旅行者でも入りやすく敷居の低い店が上位にランクインされることが多いがOADの場合は全く異なる。イタリア語のみ、予約不可、カード不可、郊外、の店が軒並み高評価を得ている。ソスタンツァは土日休みで8月はしっかり1ケ月休暇を取るし、ルッジェーロは市内中心部から歩いて行くのは困難。通りがかってはいるような店でもない。ブカ・ラーピは70年代にはミシュランの星を持っていたこともあるがアンティノーリ宮殿地下にありトラットリアとはいえ格は高く、いまだに予約も困難。カッミッロは老舗で今も家族経営。イル・ラティーニは開店前に行列ができ、ビステッカ工場と揶揄されることもあるが常に高い人気を誇る。チブレオはオールドイタリア料理ファンには懐かしい、かつて西麻布にあったチブレオの本店だ。 なぜここまでフィレンツェの老舗トラットリアに人気が集まるのか?まずこのOADのランキングシステムについて考えてみると、これはTOP Reviewerも同時に発表されており氏名と国籍、レビュー数も発表されている。ちなみにTOP100レビュアー中イタリア人は23位のDavide Bertelliniと97位のBob Noto2人のみ、しかもミラノとトリノ在住だ。つまりこのフィレンツェのトラットリアを高評価しているのは圧倒的に非イタリア人ということになる。ならば当然なにかしらのガイドブックなりサイトなりを見て、可能であれば予約して食事に行っているはずだ。 そこで調べてみたのだが、イタリアのトラットリアを評価するガイドの最高峰、ガンベロ・ロッソ Gambero Rossoで3つ星に相当するのが3本エビ、トレ・ガンベリだが上記18件のうち2019年度版でトレ・ガンベリを獲得しているのは1件も無い。さらにTripAdvisorを見てもフィレンツェの「Cucina locale」ランキングで上位100件のうち上記6件は1件もランクインしていない。ついでにミシュラン・イタリアも見たが、掲載されているのはイル・ラティーニとチブレオのみ。フィレンツェのトラットリア偏愛主義の理由がどうしてもわからない。この謎、解ける人どなたかいるだろうか?

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